第883話廉とジーク
「直ぐに来るって書いてある」
「そうか。ここで待っていれば、良いって事か。僕はここで失礼するよ」
「ありがとうございました」
「……ゲンマに似ず、礼儀を知っているな」
「五百年前の」
「……そうだ。急に変な事を聞くが、マークの事を知っているのか?」
「誰ですか?」
「気にしないでくれ。もう行くよ」
「はい」
ジェームズは再び国立図書館の警護へと戻る。
「ジェームズと仲が良いみたいね」
スカーレットは一人になった廉に立つ。
(木山廉。魔属性を受け付けない体質。それはレヴァンティンの加護によるものでしょうけど、それでも幻魔討伐に大きく貢献した。木山廉もう少し、貴方の事を知りたいわ)
スカーレットは謎に包まれた廉の事を知ろうと、話を続けた。
「……さっき会ったばかりですよ」
「……チーム[ダイヤ]のリーダー、ミスターXこと、春夏冬秋人も中々の強者よ。貴方は強者を引き寄せる力でもあるのかしら?」
「そんな事はないと思いますよ。昔は強かったみたいですけど」
「……昔?」
「記憶を失ってまして、それで異能まで変わってしまったらしくて」
「レヴァンティンでは無いの?」
「同じレヴァンティンらしいですけど、何かが違うみたいですよ」
「そう。私は警護に戻るわ(……直接話を聞いても、分からずじまいか)」
スカーレットと入れ替わる様に、ジークが廉の前に立つ。
「……[レジスタンス]のメンバー達がこっちを向かっている」
「紙に書いてあった通りに来ているのか」
「紙?」
「これを渡されて」
「……見せて貰っても」
「良いけど」
廉は紙をジークに手渡す。その紙を見て、ジークは驚愕する。
(……これは、読めない。昔に見たことのある文字だが、この文字は特定の人物だけが読める様に細工されている。わざわざ、する必要があるのか?)
ジークは紙を廉に差し出し、廉はそれを手に取る。
(……木山廉には何の違和感も無いか。特定の人物だけに読める様にするには、その人物の詳細な情報が必要になる。アメリカ軍の誰がそれを知っている?)
ジークは考えいると、廉が話し始める。
「……聞いても、良いか?」
「構わないが」
「[レジスタンス]にどうして入った?」
「過去に色々とあってな。全て語っても良いが、簡潔に言うと、川上道場で人生観を変える出来事があったからと答えておくよ」
「……信用しても良いのか?」
「日本に戻れば、川上玲奈の魂は返そう」
「そんな簡単に返すって」
「最終戦争に巻き込まない為だ。だからこそ、川上玲奈と川上舞が動けない状況を作った」