第874話 懐かしき顔
「記憶を失っていまして」
「……木山家の人間は皆そうなのかい?」
「はい?」
「済まない。顔や発言が五百年に出会ったゲンマに似ていたからね」
「……俺の祖先なのかな?」
「多分、そうだよ。彼も魔に対する耐性があったからね。……そんな君に頼みたい事があるのだけど」
「なんですか?」
「アメリカ軍の所に行きたいのだけど、そう簡単にたどり着けそうに無い。案内してくれないか?」
「……良いですよ。その代わりチーム[ダイヤ]の居場所を知りたいんですけど。皆とはぐれちゃって」
「……チーム[ダイヤ]?イギリスの[円卓の騎士団]の傘下が居ると言う話は聞いていないが……君の案内してくれる場所まで行ければ、知る事は出来そうだ」
「……ずっと、気になっていたんですけど……聞いても良いですか?」
「なんだい?」
「五百年前の事を何故、知っているのですか?」
「勿論、その時を生きていたからね」
「……そうですか」
廉はジェームズが長年生きている理由を尋ねる事はなかった。
何故なら、長年生きる人間はこの世界でも、数は少なく、その多くが管理する神に所属している。
「アメリカ軍の本部に何の目的ですか?」
廉はジェームズの素性が分からない事もあって、目的を尋ねる。
「聞きたい事があるんだ」
「分かりました。行きましょう」
廉は手にしていた地図を手にして、アメリカ軍の本部を目指し、歩き始める。
「……良ければ、抱き抱え、空から向かう事も出来るが」
「俺も空なら、飛べます。飛行が出来ないと思っていたので」
「では、空から行こう」
廉は炎神の魔武器を発動させ、炎に包まれたマントを装備すると飛行し、ジェームズは骨組みの翼を生やすと飛行を開始する。
「……魔法陣」
廉の前に突然、現れた魔法陣によって動きを止める。
「……久しぶりだな。木山廉」
「ジークフリード・アンサンブル」
「……ここで何をしている?」
「……[レジスタンス]の総帥になったと聞いていたが、皆はどうした?」
「はぐれたんだよ。……[レジスタンス]のメンバーらしいな」
「そうだが」
「……玲奈さんを元に戻してもらう」
「構わない。アメリカから帰れば、直ぐにでも、魂は返却しよう」
「……信用しても良いのか?」
「君次第だ。下に降りて貰おう。川上舞と佐倉紫音も居る」
「舞?」
廉は寝たきりになっている筈の舞の名が出た事によって、動揺する。
「……下に降りれば、分かる」
「…すみません。少し、だけ待って貰っても良いですか?」
廉はジェームズに確認を取る。
「一緒に下に行こう」




