第873話 最強の魔帝竜(アジ・ダハーカ)
「……やめた」
最強の魔帝竜となっていた男は元の姿に戻ると、ジェームズに背を向ける。
「逃げるのか?」
「そうだけど。お前とやっても、相性的に良くない。ここは退却させて貰う」
ジェームズは後を追うことも無く、ただ見つめていた。
「目的も果たしていないにも、関わらず、撤退か……どうゆうつもりだ?」
ジェームズは男の行動に気にしながらも、元の人間の姿となると、ジェームズに目の前に現れた本を手に取る。
「これは叡智の書」
叡智の書は様々な情報が詰め込まれた本であり、見る者によって、描かれる文章が変わると言う書物である。何故なら、手に取った者に応じて、知りたいと思った知識が新たに描かれる為である。そして、叡智の書は必要とする者の目の前に唐突に出現する本である。
ジェームズは叡智の書を開く。何も描かれていなかった白紙のその紙に浮かび上がっていく。
「……最終戦争?」
ジェームズがチーム[バベル]のリーダーが逃走した理由を求めた結果、叡智の書が出した答えは[最終戦争]の文字だけだった。
「……これは何を示唆しているんだ?」
ジェームズが考え方を変えた。最終戦争とは何なのかと、すると叡智の書に描かれた文字は変化する。
「……管理する神が動く様だね」
最終戦争についてジェームズが理解すると共に叡智の書はジェームズの手元から消えていった。
「……管理する神のNo.5~No.10が動くなると、No.9のチーム[バベル]はこのアメリカで息の根を止めたい所だが、アメリカ軍が何をどこまで知っていて、どう動くかだな」
ジェームズは骨組みの龍を数体国立図書館に配置させると、ジェームズ本体は背中から骨組みの翼を生やし、飛行を始める。
(……総司令官に話を聞かないと、何も出来ないな)
ジェームズは真っ直ぐ飛んでいたものの、ふらつきながらも飛行になった事に戸惑う。ジェームズは地上に降り立ち、骨の翼を消滅させる。
「……空間を歪ませているのか?」
「……皆もそう言っていたけど、俺はそうは感じないって事は魔属性の攻撃か何かなのか?」
「……ゲンマ……なのか?」
「えっ?」
「……済まない。五百年の前の話だ。忘れてくれ」
「……ゲンマって名字は木山ですか?」
「そうだ。木山ゲンマ、知っているのか?」
「木山家は代々ゲンマの名を襲名しているんですよ。俺の親父もゲンマだったんですよ。それに俺もゲンマの名を襲名する筈だったらしいですけど」
「らしいって自分の事なのでは?」