第87話 かかってきた電話
ドレアはバイブで震えているスマホをポケットから取り出す。
手に取ったスマホはいまだに震えている。それだけたったそれだけ、だけどドレアは苛立っていた。チーム[ゼロ]のリーダーが電話をかけてくる時は決まって、ろくな事が無い。今までにも数回電話があったが無理難題な任務の依頼や、いきなり海外に行けと言われたり、しかし、ドレアが苛立った理由は別だった。
それは現在が任務中と言う事だ。
今まで任務中にあった電話は苛立ちを覚えるものばかりだった。
相手が神能力者、神異能力者だから殺すなや任務の途中で引き返せ等だ。今回も木山廉が神異能力者と言う理由だけで動かなければいけない事に対しても苛立っていたが、もう薄れた。この電話によって。
出なくても良いが、出ないと[無神]が出てくるだろう。それが一番避けたい事だ。ドレアはため息をつくと、ゆっくりとスマホを耳に当てる。
「なんの用かしら」
ドレアは代々の用件の予想がついていたが社交辞令としてやり取りをする。
要件はドレアの予想通りだった。
「記憶操作は完了したようだな」
ドレアは予想していなかったその言葉に少し驚く。
[無神]は言い切らずに誰か、から聞いてきたかの様に言った為、[無神]からの電話は今まで以上に厄介な事になるとドレアは理解した。
日本全体を任されている[無神]に報告を入れた人間は何人か思い浮かぶがドレアは考えを止めた。[無神]の実力は管理する神の中でもトップクラスだ。詰まりは[無神]よりも上の立場の人間である事が用意に分かってしまう。それが分かってしまったからこそ電話の内容に不安を覚える。どの道ドレアに断る事が出来ないのはドレア自身が一番理解していた。先ずは忘却の業火はしっかりと効いていた様だ。この情報を連絡してきたとなると次の行動の指示の連絡だろう。
これから忙しくなると思うと自然とため息を溢すドレアは覚悟を決める。
「それで、用件は?」
「山梨に戻れ」
山梨?
電話が来なくてもドレアは戻るつもりだった。
しかし、忘却の業火がしっかりと効いているのを確認してからだが、この電話はそれでは手遅れになる又は急がなくては管理する神の危機、利益が損なう恐れがあるためと理解出来たドレアだが、わざわざ電話で急がせるなんてただ事ではないと察するドレアは嫌な緊張感が走る。
これが管理する神の直々の依頼なら失敗すればドレアに罰が下る事になるだろう。神能力者、異能力者、重要な人物を殺した人間を無残に殺したと言う話を耳にした事のあるドレアは額に汗を流していた。
「山梨には玲愛を置いて来たわ。覚醒は出来ずともかなりの戦力よ」
「それが使い物にならなくなったらしい」
ドレアはようやく理解した。
玲愛の能力は神の義手、神能力者だ。
管理する神は神能力者、神異能力者を出来る限り失われない様に動く組織だ。しかし、ドレアには一つ気になる事がある。
玲愛は覚醒が上手く扱えない様だけど、実力あると考えていたドレアにとっては考えてもなかった電話だった。それに追い込まれれば覚醒出来るとも考えていた。