第868話 ヘラクレスの最後
「……最終戦争?」
「直ぐに分かるさ。戦うにしろ。逃げるにしろ」
「逃げないよ」
「……親子だな。で、何の用でここに来た?」
「シェルターに行こうと思って」
「スライムの対処も出来ずにか?」
「それは……」
「構わない。さっさと行け!」
「貴方?」
「俺はここを死に場所と決めている。お前らまで死ぬ必要は無い。スライムを体に留めておくのは、限界だな」
「今からでも間に合うかも」
「必要ない。俺はここで終わる。そう覚悟を決め、ここまで来た。ここで終わらせてくれ」
「でもー」
「……敵も本腰を入れたな。見ろ!」
ヘラクレスに言われるがまま、舞、紫音、氷は空を見上げる。
空には巨大なスライムが落下していた。
「そろそろ、お迎えが来そうだ。最後にお前ならに伝えておく。先ずは氷川家のお前ら……異能を代々継承するのが、正しいのか考えてみろ。今までがそうだったからと言う理由だけで、これからもそうである必要は無い。佐倉にも言いたい事があったが、寝ているならー」
ヘラクレスが佐倉家の話から話題を逸らそうとしたその時、紫音が前に出る。
「僕は佐倉家の人間です」
「そうか。そうだな。佐倉家、上原家とは話をちゃんとつけろ。上原凍結がそれを許さないだろうがなぁ」
「氷雪の父親」
「そうだ。あいつは昔から終焉の冬を目指している。そんなに凍結の子が氷系統の力を奪える力を持って産まれるのも不運なものだ」
「凍結さんは氷雪を使って何かをしているのですか?」
「そこまでは知らねぇが、凍結は諦めるような奴ではねぇよ。……川上家最後に語ろう」
ヘラクレスは舞と向き合う。
「……川上家は上川家とぶつかり合う事になるだろう。戦っても逃げても構わない。好きにしろ。川上玲奈は逃げずに戦ったがな」
「お母さんが?」
「あぁ、川上玲奈の存在で川上家は守られたと言っても良いだろう。今、川上玲奈はジークによって、魂が抜かれている。これを好機と捉える上川家のものが居るかもしれない。抑止力となっていた川上玲奈の不在が上川家の反乱に繋がらなければ良いが」
「どうして、そんなに詳しいんですか?」
「昔、一緒に戦ったからなぁ。懐かしい……お前達子供を見ていると、幼く、弱く、不安定だが……この思いは昔と同じだ。……頼もしいな」
「ヘラクレスさん」
「行け、立ち止まるな。ジークが選んだ木山廉の仲間を守れれば、良い最後を迎えれそうだ」
「……ありがとうございました!」
舞は深々と頭を下げ、ヘラクレスへ感謝を伝える。




