第867話 ヘラクレスの言葉
「スライムの量が多いな」
氷のその言葉通り、シェルターの周りには巨大なスライムが無数に存在していた。
「……巨大なスライムが幾つか消えていく」
「誰かが、スライムを倒しているみたいだね」
「兄貴、このまま真っ直ぐ行けそうだぞ」
「……あのスライムをどうやって、対処しているんだ?」
「それよりも、シェルターを目指そうぜ。スライムの相手は御免だぜ」
「そうだね。シェルターを目指そう」
シェルターを目指し、走っていた紫音、舞、柚子を抱き抱えた氷はスライムが居ない事もあり、簡単に進む事が出来ていた。しかし、空から突然、巨体なスライムが落ちてくる。
「……突然、降って来やがった。兄貴、凍らせる事は出来そうか?」
柚子を抱き抱えている氷はスライムの対処を紫音のみで出来るか確認を取る。
「紫音、私も手を貸すよ」
「斬撃は効果的ではないと思う。何か、方法はあるのかい?」
「……それは……ごめん」
「……舞らしく無いね」
「いつもの私なら、どうしていたと思う?」
「……どうしていたんだろうね。僕には分からないけど、舞はもう答えを出しているんじゃあ無いかな?」
「……お母さんなら、出来ていた。でも、私は出来るか分からないよ」
落ちてくるスライムは何かに引き寄せられる様にして、移動する。
「……あり得ない」
紫音は目の前で起こっている尋常に驚きを隠せなかった。
出現したスライムを全て吸収している人物を目する。
「……ここで何をしている」
左腕を失ったヘラクレスは今にも倒れそうな様子だった。
「大丈夫ですか?」
「……佐倉紫音か……氷川家の子供よ。氷川氷も良く両親に似ている」
「両親を知っているのですか?」
「チーム[アブノーマル]の木山廉、川上舞、佐倉紫音の両親は昔会っている。昔日本で結成されたチーム[シード]には、日本中から様々な人間が集まっていた。……昔を懐かしむ暇は無さそうだ。俺の最後の相手がスライムとは俺の人生は……考えるのは、止めよう。ジークが何でお前らに付いていこうと思ったのかは、今でも分からないが、ここでお前らを守っておかねぇとあいつの降霊術で何をされるのか分からねぇからなぁ。守ってやるよ。次世代の子よ」
舞はヘラクレスの正面へと立ち尽くす。
「お母さんは、川上玲奈は貴方から見て、どう見えましたか?」
「……味方で良かったと思ったよ。敵には同情したもんだ。でも、戦闘のみでの話だ。あの頃、全世界で協力して、管理する神を倒すのに必死だった。川上玲奈はそんな状況で強くなろうとしていた。最終戦争と呼ばれる戦争が再び行われる」