第864話 ヘラクレスの決断
「……チーム[ヴァルハラ]聞こえている者はここに集まれ!」
ヘラクレスのその叫びはシェルター居たベルセルクとジークにも届く程の声量だった。
「ヘラクレスが何かするつもりだな」
「ベルセルク……止めないのか?」
「あいつなら、やってくれる」
ヘラクレスの叫びによって、集まったメンバー達を見て、ヘラクレスは直ぐに動いた。
「このまま、ここに居てもあのスライムに呑まれるだけだ。俺以外はシェルターに向かえ、俺は単独でスライムを倒す!」
チーム[ヴァルハラ]のメンバー達は迷う事無く、シェルターを目指し、動き出す。メンバー達はスライムに恐怖した訳でも、死を恐れた訳でも無い。ただヘラクレスの実力を信じての行動だった。
「……スライム。ここで終わりにしてやる」
ヘラクレスは魔法陣を出現させると、魔法陣から猛毒竜の槍を取り出す。
「防具も付けておくか」
ヘラクレスは魔法陣を頭上に出現させ、換装する。魔法陣はヘラクレスの体を通過すると、黄金獅子の鎧を装備する。
黄金獅子シリーズの鎧であり、鎧の強度のみなら、随一と言われる鎧である。
「勝負だ!」
黄金に輝く鎧を身に纏い、一本の槍だけを携えたヘラクレスは津波の様に押し寄せるスライムに向かって飛び込んだ。
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「……お母さんが倒したスライムがまた、シェルターに向かっている」
シェルターに向かっていた舞はスライムが津波の様に接近している事実を把握する。
「お母さんって玲奈さんも意識を取り戻したのかい?」
舞のその言葉に紫音は驚きながら、確認する。
「まだ、病院に居るよ。ジークの降霊術で私の体にお母さんの魂を入れてくれたんだ。そして、お母さんは私の体を使って、スライムを倒してくれたんだけど……」
言葉を詰まさせた舞を察し、柚子が話始める。
「……スライムを生み出す本体を倒さない限り続くのかもね。このスライムを倒しても、本体を倒さなければ、終われなそうよ」
「だったら、本体を探すか?」
「……氷君は本体が何処に居るのか分かるの?」
「それは……知らないが」
「……本体を探すのは難しそうよ。で、どうする?」
柚子は舞へ確認を取る。
舞は暫く考え込むと、答えを出す。
「シェルターに向かおう。ジークやジークの仲間が心配だよ」
「舞なら、そう言うと思ったよ」
「紫音は違った?」
「同じさ。本体を倒せれば、このスライムも消えるだろうけど、本体の場所が分からない以上、ここでこのスライムを倒した方が良い」