第859話 消化機能の液体
消化機能のある液体は一ヶ所に集まると、ジークに向かい放たれる。
「……狙いを絞ったか」
ジークは魔法陣を自身の目の前に出現させ、それを防いでみせた。
「大丈夫?」
「問題無い。それよりも、攻撃がこちらに集中している今、二人で本体を狙ってくれないか?」
「良いの?」
「任せるよ」
ジークのその言葉に答える様に二人はアークへと向かって移動する。
柚子はジークが出現させていた魔法陣に飛び移りながら接近し、舞は覚醒させた深紅の緋桜によって、全員から桜色のオーラを放出させている事で飛行をしてアークの元まで移動していた。
「……ここで、決める」
舞は右手に深紅の緋桜、左手に天帝空剣を握り、高速に回転しながら、アークへ向かう。回転しながら、切断を繰り返す舞の双剣乱舞だったが、回転を止めた舞はどこか不満げだった。
「違う。双剣乱舞はこんな感じじゃあ無い。紅桜とこの剣のバランスが取れてない。どうしよう」
戸惑う舞とは違い柚子は冷静に氷神の聖剣を巨体なスライムへと振り下ろす。スライムは凍りつくと、凍りついた箇所は破壊される。
「……面倒だな」
巨体なスライムのせいがアークの声は野太く、聞こえる。そんなアークは大きさよりも数を優先させる。巨体であるが故に狙われる箇所を増やす事は明白であり、スライムを分裂させる事にした。
「……さっさとシェルターを頂戴するか」
アークは柚子と、ジークを相手にするのは時間と労力を無駄に消費する事から、目的を優先させ、動く。
そんな幾つも分裂したスライムの目の前を舞が塞ぐ。
「何のつもりだ?」
舞は手にしていた天帝空剣を地面へと突き刺す。
「ここで、貴方を倒す!」
深紅の緋桜を分裂したアークへと向ける。
そんな中、ジークが背負っている黒棺が暴れだす。
「……何ですか?」
暴れた魂を黒棺から取り出したジークは降霊術を利用して、その魂と会話を始める。
「……長くは持ちませんよ」
ジークはその魂を舞の体内へと無理矢理入れ込む。
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「……あれ?」
舞は深紅の緋桜を前方に向けたままスライム達が消え、光に包まれた空間がそこには広がっていた。
「……元気そうね」
その声に舞は飛び付く。
「お母さん」
舞は顔すら確認する事なく、抱きついた。
「……長くは持たないわ。世界でもトップクラスの降霊術を扱えるジークでも、一人の体に二つの魂を入れておく事は短時間しか無理よ」
「それじゃあ」
「双剣乱舞よ」
「無理だよ……私は双剣乱舞以外の方法であのスライムを倒す!」