第857話 切断が効かぬ相手
「死ぬつもりは無いよ。誰も死なせないし」
「時間を設けよう。十五分で倒せなければ、一旦離脱する。それが条件だ」
「分かった。十五分で決める!」
舞は紅桜を構え、紅桜から黒いオーラを放出させる。
「紅桜:不知火型:桜吹雪」
紅桜から大量の桜が猛吹雪が吹く様にアークへと襲いかかる。
桜の花が一枚一枚殺傷能力があり、分裂した十人のアークに襲いかかる。
「……覚醒の技か。珍しいものだな」
舞が放った一撃が通常の技よりも強化された技である事の珍しさに少し驚きながら、それではアークを倒せる決定打にならない事を察していた。
「……無駄。切断力や攻撃数の多さは称賛に値する。だが、それだけだ」
「まだまだ、これから」
舞は紅桜の刀身から黒いオーラを大量に放出させる。
紅桜は覚醒し、深紅の緋桜へと変貌する。
「禍々しい剣になったな。妖刀の中でも、逸脱しているな。その妖刀」
「……何の事?」
「……これは、驚いた。自分の使う、自分の対内に宿った神器位把握しておけよ」
「紅桜でしょ?」
「名前を知っていれば、それで良いって考えで剣の全てを引き出す事が出来ると考える訳か」
「……覚醒だって、出来る」
「異能の覚醒は思いによって、幾つも得る事が出来る。それは簡単なものから、難しいものに分かれる。例えば、移動を簡単にしたと思えば、移動に適した物になり、人を殺したいと思えば、殺傷能力が上がる。異能はそう言うものだ。異能と言え、神器だと少し違うのかもな」
「何を言われても、私は貴方に勝つ!」
深紅の緋桜を構えた舞は刀身から黒いオーラを放出させる。
「紅桜:不知火型:桜吹雪」
再び放たれたその一撃は先程とは違い、桜の花びらの量も速さも桁違いだった。
しかし、結果は同じだった。
どれだけの威力があっても、どれだけ切断しても、再生していくスライムを倒す術の無い舞は攻撃の手を止めていた。
スライムに有効的な攻撃が無い以上、舞の攻撃は意味をなさない。
「私も戦うわ。私の氷神の聖剣なら、あのスライムをなんとか出来るかも」
柚子は舞の横に立つと、体内に宿している神器である氷神の聖剣を出現させる。
氷神の聖剣は切り付けた箇所を凍らせた上でそれを切断する事が出来る聖剣である。
それはスライム相手でも有効的に作用するものであり、スライムを凍らせた上で切断出来れば、切断箇所は凍りつけスライムの再生機能を停止させる事が出来るかも知れないと考えに至った柚子は舞と共に戦闘することを決める。