第855話 アーク・アンダーソン
「誰だ?」
ジークはイザベラを暫く見つめると、そう告げる。
「そう言えば、お前は降霊術に長けているんだったな」
「……答えろ。魂の無き者よ」
ジークのその言葉に答える様にイザベラの姿からスライムとなり、その後アークは自身の体へと形を変化させる。
「……正体を暴いて満足か?」
「アーク・アンダーソン……ここで何をしている?」
「それはこっちのセリフだ。チーム[ヴァルハラ]は」
「もう終わりだ。チーム[ヴァルハラ]は管理する神を脱退する」
「……そう。いずれそうなると上は言っていたが、もう良いのか?」
「気づかれていたのか?」
「俺達は知らんが、ゼウス辺りはいつも疑惑の目を向けていたぞ」
「……アーク、お前の異能はスライムに包み溶かした人物に変化する事が出来る筈だ。イザベラはもう」
「そこまで分かっているなら、答えねぇぞ」
「……管理する神を倒す為、ここまで来た。倒させて貰おう」
ジークは能力である受注生産を発動させ、剣を出現させる。受注生産はジークが考えた形、大きさ、重さ等、自在に設定して造り出す事が出来る能力である。
現在造り出した剣は通常の剣と大差無い剣である。
そんな剣をアークへと投げつける。
アークの頭に剣が突き刺さり、その剣はアークの頭に突き刺さった状態で停止した。
「……無駄だ。剣では俺は倒せない」
それはこの場に居るジーク、舞、柚子の行動がアーク相手では効果的ではない事を意味していた。
「……試しに投げたが、無理か。ここは撤退する」
状況から見てもジークの判断は正しい事は誰の目から見ても明らかなものだった。柚子もそれに納得し、従うつもりだったが、舞は違った。
「……私達が逃げたら、シェルターの人達はどうなるの?」
「アークに襲われるのは目に見えている。だからと言って、アークと戦うには剣では無理な事は見れば分かる筈」
「……でも……逃げたくない。協力して、ジーク。[レジスタンス]は困っている人は理不尽な事柄から人々を守る組織でしょう?」
「……僕の記憶の全てを見せたのは間違いか」
「間違いじゃあ無い。私はお陰で知る事が出来た。[レジスタンス]が集めた廉の情報を……私は廉の力になりたい。ここで逃げたら[レジスタンス]に入れるわけない」
「……入るつもりなのか?」
「当然だよ。私は、私達はチーム[アブノーマル]そして、これからは[レジスタンス]として動く何だから」
「そこまで言うなら、納得させて貰おう。アークを倒せる根拠を」