第846話 圧倒的勝利
紫音の顔以外の全身は氷に覆われ、背からは氷の翼が出現する。
「ここで決める!」
紫音は氷に覆われた体から氷で造られた蓮の花を一瞬にして、放出させる。
すると、氷で造られた蓮の花は勢い良く、辺りのエネルギーを吸収し始める。
それは今まで、氷で姿を隠していた紫音の姿が現れる事に繋がる行為であった。いつまでも姿を隠し続ける事など出来る訳もない。ここが紫音が勝利を掴む為に選んだ場面である。氷竜神の蓮造花へと覚醒した今、氷雪の能力で凍らせようとも、無数の氷の蓮の花を対処しなければ、氷雪がどんなに早く紫音を凍らせても氷で造られた蓮の花が氷雪の能力を吸収し、氷で造られた蓮の花を凍らせても蓮の花が存在している限り、吸収を続ける。
「……そういった類いのものか」
氷雪は自身の能力と生命を吸収されている事から紫音の覚醒を見抜く。
「氷雪、君にはもうどうする事も出来ない」
「それはどうだろうな」
氷雪は瞬間冷凍を発動させる。
しかし、紫音の氷竜神の蓮造花によって、造られた氷の蓮の花は氷雪が一瞬にして凍らせた氷を吸収していく。
「見事と。と、言ってやりたいが吸収出来る量は限られているのでは無いか?」
「……」
「答えなくても、隠しても分かる。実力が伴っていないぞ紫音!」
「……氷雪の氷を出すのに限界が来るか、僕の吸収が勝つか」
「そんな勝負はする必要は無い。忘れたか?瞬間解凍を」
紫音は慌てて、自身の足元を確認する。
「月下氷神」
「そうだ。今まで吸収させてやっていただけだ。これからはもうさせないがな」
瞬間解凍は互いの合意がある時にのみ有効な能力向上である。瞬間解凍は今まで合意で奪った氷系統の魔法、能力、異能を発動出来る。同時に幾つも併用が可能であり、広範囲の瞬間冷凍との相性はとても良い。現在も瞬間冷凍と能力向上によって、瞬間解凍によって、奪っている月下氷神を同時に使用している。
月下氷神は自身が造り出した氷に接触しているものを操作する事が出来る能力であり、紫音の足元にある氷が氷雪が造り出した為、月下氷神の影響下にある。
「……ぬか喜びさせて満足か?」
「勘違いするな。お前の覚醒を観察していただけだ。奥の手がある可能性がある限り、見続けるつもりだったが、吸収のみの蓮の花ではもう見る必要は無いからな」
蓋を開ければ、氷雪の圧勝は誰の目から見ても明らかだった。
「……兄貴。(……氷雪に殺されなくても、レイチェル・レイバーに氷付けにされる)」




