第844話 因縁の対決
「……僕は、氷月をコールドスリープを止めに来たわけでは無い。その行動と考えには理解出来ないのは勿論だけど、今回ここに来たのは、終焉の冬を目的に動く上原家を止める事だ」
「出来るか?お前に」
「やってみせる。あの時とは違う!」
紫音は凍結から渡さた布に包まれたものを氷雪に向ける。
それを見た瞬間、氷雪は気がつく。
「……凍結、下らない真似を」
「下らない事なんて無い。凍結の想いは、僕の意思はこの剣と共に」
包まれた布は凍りつくと砕け散る。
「氷神撃滅剣……本来のお前の異能……体内に宿していた神器。しかし、氷神の花畑の異能力者のお前には剣を使う戦闘方法は存在していないだろう。剣を握ったのは何年振りだ?」
「……氷神撃滅剣は一度目で凍らせ、二度目で凍った物を絶対に破壊する剣。でも、僕には氷神の花畑がある。氷神の花畑で凍らせる事が出来れば、後は氷神撃滅剣で斬りつければ、それで終わらせる事が出来る」
「確かにそうだが、それが出来るとでも?」
「あの頃とは違う」
氷雪は腰に携えている氷の鋼鉄剣を抜く。
「……そう簡単には俺に触れる事は叶わないと知れ!」
氷雪が行動しようとするよりも前に紫音は自身の回りを氷神の花畑を発動させ、氷で造られた様々な花が散りばめられた壁を即座に造り上げる。
その行動はレイチェルには理解出来なかった。氷雪が攻撃をしたわけでも無いのに、防御に徹するよりも先制で攻撃する方が戦闘に置いては効果的である。それにも関わらず、いつ来るのか分からない攻撃に備える紫音の行動にレイチェルは首を傾げていた。
しかし、レイチェルから少し離れた場所に居る氷の評価は違った。
「定石だな。瞬間冷凍は目視したものをいつでも凍らせる事が出来る。氷の壁を築いておけば、兄貴の姿は捕らえられない」
氷のその言葉を受け、レイチェルは理解する。
(道理で厚く、花等が多い訳ね。それで自身の姿が透き通らない様にしているって訳ね)
紫音の企みを理解して、紫音の行動が検討違いでは無い事を知ったレイチェルだったが
(防御は万全……欲を言えば、防御の前に攻撃をしておくべきだったわね。それに上原氷雪の能力は今日や昨日手に入れた能力ではない。長所も短所も十分に分かった上で扱えるって事を理解しているのかしら?見えなくなった相手の対処も出来ないとはとても思えないけど)
レイチェルの予想通り、氷雪はこの軽度で攻撃が出来なくなるような弱者ではなかった。それは紫音を理解している事だった。