第836話 ジェームズ
「……レナとはそう簡単に会ってはならないのよ。会ってしまえば、私達は止まらない。今もレナと戦いたいと思っている」
「……それは、止めて貰いましょう。アメリカの大将が一人失うのは残念ですから」
「私が負けるの前提ね……確かに勝てるか分からないし、大将の中じゃあ、最弱だと、理解しているわ」
「……」
「……大将を埋める為に私は選ばれた。もうすぐの筈ね。中将にされるのは」
「そもそも、貴女はアメリカ軍のやり方とは合わないのでは?」
「そうかもね。そろそろ、辞める頃合いね」
二人が談笑しているそのステルス機に一人の男が乗り込む。
白銀の髪に病弱な姿のその男こそ、アメリカ軍の大将の一人ジェームズ。名門の家系から逃走して、現在はジェームズで名乗っており、それを知るものは昔に無くなっている。ジェームズは数世紀に渡って、生きている人物であるが容姿は二十代前半位の見た目である。
数世紀に渡って生きる彼が生きる事が出来たのは、骸骨腐敗龍の異能によるものだ。自身の体を骨のみで形成された十メートルを越える龍の姿へと変化させる事ができ、骨からは汚染物質を放出させ続け、人間の肉体を腐敗させ骨のみを回収している。
ジェームズは保有している骨が存在している限り死ぬ事は無く、数世紀に渡って生き続けている。
「三人揃いましたので、移動させて貰います」
その男が告げた通りにステルス機は移動を開始する。
「到着しました」
非常召集によって集められた三人はステルス機から出ると、その建物の個室に向かっていた。
部屋の前にやって来た三人は扉の開いている部屋へ入っていく。
「良く来たね。座って待っていてくれ」
その部屋に唯一居たその男はアメリカ軍総指揮官を務める男である。
その男に言われるがまま、三人は席に着く。
沈黙がつづく中、レイチェルが口を開く。
「聞いても良いでしょうか?」
総指揮官を務める男へとそれを投げ掛けた。
「構わんよ」
「……趣味の悪い人形の様ですが、本体は来ないのですか?」
「君の言いたい事は分かるよ。君達は命の危険を伴ってまで移動しているにも関わらず、私は破壊されても困らない人形だ。君達の指揮官でもある私がこの様な逃げ腰で失望したかね」
「……アメリカ軍の総指揮官の姿をここ数年見たものは居ないと聞いた事があります。何故姿を現さないのですか?」
「理由は大きく分けて二つだよ。一つは管理する神No.9チーム[バベル]のリーダーに命を狙われた事。二つ目は幻魔が掛けた幻覚にかからない様にするため」