第824話氷神の束縛(コールド・ゲージ)
「それでどうやって、アメリカに行くつもりなんだ?」
弟である氷にアメリカに行くことを進められ、元に行くことになった紫音はアメリカへ移動方法を尋ねた。
お互いに氷系統の異能であり、アメリカへ簡単に移動することは出来ない。
「橘強絶が所持している自家用ジェットを貸してくれるとよ」
「……運転出来るのか?」
自身は勿論運転の技術が無いため、紫音は氷へと尋ねる。しかし、氷が運転出来るとは思えなかった。
「出来るわけ無いだろ。運転する奴はここに連れてくるとよ」
「……そうだよね」
「……一つ聞いておくが、上原氷雪は何が目的なんだ?」
「悪い事をするわけでは無いと思うよ」
「妹から能力を奪おうとしている男だぞ」
氷が紫音に掴みかかろうとした時、氷の周囲は氷の鉄格子に囲まれる。
氷の鉄格子を見て、紫音は誰の仕業か理解する。
「上原凍結」
紫音は突然現れた凍結に目を向けると、警戒心を強める。
上原凍結は管理する神の傘下のチーム[プロダクション]のリーダーディジーに造られた存在であり、現在は上原家で生活している人物である。
そして何よりも氷川の伝統によって、氷神の花畑、暴滅氷神竜を継承していくその過程で、紫音と氷が受け継いだ事もあり、二人が元々持っていた異能は抜かれ、その変わりに氷川が代々受け継いできた氷神の花畑は紫音に、暴滅氷竜神は氷に受け継がれている。
「……俺の元々の異能を当たり前の様に使うな。上原凍結!」
「威勢だけは相変わらずだな。氷川氷。この異能は元はお前のものだ。ならば、理解出来るだろう。氷神の拘束に捕らわれた者は出る事が出来ない」
凍結のその言葉に紫音は直ぐ様反論する。
「出るが出来ないと言う話は少し、違うな。氷神の拘束は内部の破壊を受け付けないのであって、外から攻撃なら破壊が可能だ。それが分からない程、愚かではあるまい」
「理解している」
「なら、何故僕も閉じ込めなかった?」
「お前には話があるからだ」
「閉じ込めても出来るだろう?」
「……最悪、戦闘しても構わないと思ったからだ」
「出来るだけ、戦わない方向で進めたい。それで、話とは?」
「氷雪様についてだ」
「……氷月の病気はそこまで進行しているのか?」
「……氷雪様は死ぬ前に氷月様の能力を受け継ぐつもりだ。それはお前も分かっているだろう?」
「それが氷雪の能力向上による力か?」
「そうだ。と、言っても、相手の合意があってこそだ」
「……では、今までも無理矢理やった事は無いのか?」