第810話 決意のローラン
「舞。俺は昔の記憶を失っていても今の俺が変わる訳ではない。俺は記憶を失う前でも失った後でもお前達を守りたいと言う考えは変わる事は無い。だから、俺は舞と玲奈さんを助けるよ」
「……待ってるね」
「あぁ。待ってろ!」
ーーーーーーーーーーーー
「己との自問自答は終えたか?」
廉に似た存在は唐突に廉の前に現れる。
「ローラン・アルガストもこれと同じ事を?」
「……どうだがな。やるべき事は分かっているのだろう?」
「あぁ、後はやるだけだ。舞を玲奈さんを助ける!」
「……異能は持ち主の思いに答える。後は望めば良い。そうすれば、異能が応じるだろう。と、言ってもお前の場合記憶を取り戻さなければ話にならんがな」
「結局、記憶かよ。本部決定の三回戦で現れるって言う封魔を倒すしかないか」
「信用するのか?管理する神No.10チーム[ブレイン]のオリビア・カシーを」
「わざわざ、聞かなくても分かるだろう?」
「検討を祈るよ」
廉に似た存在の消失と共に廉は目を醒ます。
「帰って来たようだな」
「……ローラン・アルガスト……さん」
「ローランで良い。俺も廉と呼ばせて貰うからな」
「貴方も俺と同じ経験を?」
明らかな目上の人物であるローランを呼ばせてする事を躊躇った廉は貴方と呼称し、会話を続けた。
「それぞれ、歩んだ人生が違うからな」
「それじゃあ、誰かが背中でも押してくれたのか?」
「あぁ、お節介な幼なじみにな」
「お節介な幼なじみ?」
廉が誰の事を示唆しているのか分からず、顔を傾げていると
「酷い言い様だな。ローラン」
廉の背後から、ローランの話に出てきたお節介な幼なじみが姿を現す。
ローランと同じ十二本存在しているフランスの象徴と言われた穢れなき聖剣を手にした銀髪のその男はローランの様子と呆然と立ち尽くす廉の姿から二人が対峙し、敵対関係に無い事を察すると、穢れなき聖剣を下げる。
「オリヴィエ・シュヴァリエだ。フランスのチーム[スターレイン]のリーダーを務めているお節介な幼なじみだ」
ローランの皮肉混じりな紹介によって、廉は精神世界でローランを自問自答の果てに救った人物であると把握する。
「……こうして、話すのは何年振りだろう。ノブレスに体を乗っ取られてから、君は避けていたからね」
「それは俺の意思じゃあ無い」
「だろうね。それでこれからどうするつもりだ?」
「取りあえず、フランスを救う。その後は償いの旅に出ることにするよ」
「……フランスが君を罪に問わない事を知っていたのかい?」




