第805話ローラン・アルガスト
「大丈夫ですか?」
廉は頭を抱える男性に元に駆け寄り、声をかける。
「……駄目だ。俺が死ぬべきだったんだ!」
顔を上げたその男を見て、秋人は廉の元に駆け寄る。
「リーダー……この男はフランス最強と呼ばれるローラン・アルガストです」
「えっ?」
廉は目の前に居る男がフランス最強と呼ばれる男は同一人物だと思えず、声を荒げた。
「……見たことは無いが……本当にローラン・アルガストなのか?」
武田はローランの顔を覗き込み、確認を取る。
「でも、兄貴がそう言うんだ。そうでしょ」
雲雷は何の疑いも無く、秋人の告げた言葉をすんなり聞き入れ、疑う事はなかった。
「……駄目だ。駄目だ……駄目だ!」
「何が駄目なんだ?」
取り乱すローランに廉は優しく語りかける。
「操られたとは言え、多くの人間を殺し、仲間を裏切った」
「……フランス最強の男が何を言っている?過ぎた事よりも、これからだろう?お前が多くを奪ったなら、それ以上を守って見せろよ!」
「無理だ。出来るわけ無いだろ?」
「何で、分かる?やっても無いやつが、何でやった後の事が分かるんだよ?全てはやった後に分かる事だろう?やって見ろよ。フランスも守れ」
「出来るわけ無い。俺一人で何が出来る?」
「俺も手伝ってやる」
「二人で何が出来る?」
ローランのその叫びに直ぐ様秋人、武田、雲雷が割って入る。
「「「俺が居る」」」
その場に居る[レジスタンス]が協力する事が口にされ、廉はローランに再び語りかける。
「……[レジスタンス]の総帥として、ローラン・アルガスト。お前を救ってやる!」
「……[レジスタンス]……総帥?誰だお前は?」
「俺は木山廉だ」
廉の元に秋人が静かに近づいていた。
「リーダー……総帥になられる決意を?」
「……やれるかは、分からないけどやってみないと分からないだろう。総帥をやって、務まらなかったら、遠慮無く切り捨ててくれよ」
「リーダー以外に総帥を務まる人はこの世には居ません」
「……何、その絶対的な信頼は?」
「当然の事ですから」
秋人は突然、感じた巨大なオーラに気がつく。
「リーダー……フランスの上層部のお出ましです」
秋人は突然現れた男を見てそう告げる。
「そうなのか?」
「はい。ローラン・アルガストの実の父親。ガーロン・アルガストです。フランスの上層部の中でも、実力派と知られている男です」
「……何をしに来たと思う?」
「連れ戻しに……と、言いたいですが……その割にはオーラの放出を続けているのが気になります」