第804話穢れなき聖剣(オートクレール)
「……では、オリヴィエ君。十二本の穢れなき聖剣の封印を一瞬だけ、解くよ」
「はい」
穢れなき聖剣は現在封印されており、次の適合者が所持する事無く、ここに留まっていた。封印を長く解き、適合者がいなければ、新たに産まれてくる適合者の体に宿って産まれてくる事になる。
老人がケースを開けると、十二本の内、二本の穢れなき聖剣が動き出す。一本はオリヴィエの元で停止したものの、もう一度は壁を破壊して、外へと移動を始めた。
(……ローランの元に行ったな)
オリヴィエは外へ飛んで行った穢れなき聖剣の行き先をローランの元に行ったであろうと何故かこの時にそう思っていた。
老人はケースを閉め、再び穢れなき聖剣の封印を行う。
「オリヴィエ君。かつての友を救おうとは思わないかい?」
「……今も昔も友です」
「救って来なさい」
「はい!」
オリヴィエはすぐさま、ローランの元に行ったと思われる穢れなき聖剣を追いかけ、飛び出していく。
ーーーーーーーーーー
イギリス国内において、幻魔の討伐に成功し、フランスの救援に来ていた木山廉は頭を抱え、立てずに居る男性を見つけ、思わず声を出していた。
「……どうかしたのかな?あの人」
廉のその声に反応して、その場に居た春夏冬秋人、立花雲雷、武田信玄の三人も頭を抱える男性を認識する。
「……フランスの危機によって、困惑しているのか?」
武田は男の様子と、フランスの状況からそう予想するも直ぐ様、雲雷が否定的な言葉で割って入っていく。
「そうですか?身なりを見てくださいよ。どう見てもフランス軍に所属してますよ。戦闘に駆り出され、戦場の厳しさでも知った新米兵士って所ですよ」
武田はぐうの音も出す事も出来ず、素直に認める。
「……そうだな。見た所そうだと言えるな。しかし、俺たちもフランスに居たが、フランスの上空を覆う無数の魔手は少し位しか動かなかったぞ」
「それでも、フランス兵にとっては苦痛だったのでは?」
武田と雲雷のその会話を聞きながらも、秋人だけはまだ何かを考えている様に見えた廉は直ぐに確認を取る。
「何か思う所でもあるのか?」
「……リーダーは何か感じませんか?」
「……嫌、何かあるのか?」
「俺の能力の影響なのかもしれませんが、あの男が放つオーラは特殊なものです。分類的には強者に当たります」
「では、ただの新米の兵士ではないと?」
「はい。それだけは断言します」
秋人のその言葉を受け、雲雷、武田の二人は会話を止め、秋人の言う強者であると認識する。




