第802話 武田の人柄
廉に尋ねられ、答える気でいた武田はその役目を奪った雲雷を酷く睨み付ける。そんな武田に気づいた雲雷は冷や汗を流しながら、武田の廉に対する思いは人一倍な事や、廉の事になると周りが見えなくなる事、そして今まで雲雷が見てきて知っている武田からしてこの場を乗り切る方法は一つだった。
「……パーティー会場の外に切り裂きジャックが現れましてね。それは簡単に倒して俺の出番を武田さんが奪ってからと言うものの、俺の活躍する場面が無いんですよ。兄貴や廉の兄貴の前で活躍出来れば良いんですけどね」
雲雷のその話を話を聞いた廉は武田を見つめ、告げる。
「切り裂きジャック……名前からして凄そうな奴ですね。簡単に倒すなんて、凄いですね」
廉のその言葉を聞くと共に武田は雲雷を睨み付けるのを止め、腕を組む。
「全く、そんな事をわざわざ言わなくても良いだろう。大した相手でもなかった。自慢話にもならん程にな。だが、木山を守る為にあの様な者に遅れをとる様な無様な戦いなど出来るわけも無い。ここでのフランスでは俺が守るぞ!木山!」
「……えっと、はい。お願いします」
「任せろ!」
武田の盛り上がりを見て、秋人は雲雷に駆け寄る。
「武田さんのリーダーへの重すぎる思いは理解していたが、ここまでだったとは」
「兄貴……武田さんはまだまだこれからですよ。廉の兄貴と会う前から、廉の兄貴の話ばかりでしたから……これからですよ。武田さんの廉の兄貴を守りたい病は」
「リーダーを守りたい病か……俺もその病気にかかっているかもな」
「……止めて下さいよ。こんなの二人も居たら、俺の身が持たないですよ」
「そうか。そうだな、一人居れば良い」
「出来れば、一人も要らないですけど……何を言っても武田さんは変わらないでしょうね」
「そう言うな。武田さんみたいな人が居ないと困る」
「……兄貴がそう言うなら、武田さんと組むのは我慢しますよ」
「ひょっとしたら、武田さんと組のは今日が最後になるかもな」
「廉の兄貴が関わってます?」
「あぁ、[円卓の騎士団]の脱退はエリザベス女王に認められ、これからは[レジスタンス]として動こうと思う。リーダーの記憶が戻るまでは武田さんにリーダーの護衛を頼もうと思っている」
「……武田さんの人柄は俺も嫌いじゃあ無いですよ。真っ直ぐ過ぎて、曲がる事を知らない武田さんだからこそ、廉の兄貴の護衛は何があってもやり遂げますよ」
「……護衛に関しては、[レジスタンス]のメンバーでも随一だからこそ、リーダーの護衛を任せられる」