第801話 再会
悪霊の様な存在が空を多い尽くす無数の魔手を吸収していたその場所へ雲雷と武田の二人は向かっていた。
「兄貴!」
秋人を見つけた雲雷は元気よく、走り出す。
「久しぶりだね」
「数ヶ月振りです。その仮面はまだつけられるのですか?」
「……[円卓の騎士団]を止めた事だし、必要無いか」
黒いオーラで造られた黒い仮面を取り外すと、その仮面の形を崩し、黒いオーラへと変換させた。
そして、仮面の下に隠されていた顔が姿を現す。
「……イケメンかよ」
顔を隠していた秋人のその容姿を見て、廉は思わず叫んでいた。
「どうかしたんですか?廉の兄貴」
「……廉の兄貴?……俺か?」
「はい。俺が兄貴と呼ぶのは兄貴と廉兄貴の二人だけです」
「そうなんだ。って言うか、何で仮面なんかつけていたんだよ」
廉のその質問に秋人が答える前に合流したもう一人が廉を見て、両手で廉の両肩を掴みかかる。
「木山……廉。元気そうだな」
「……えっと……誰?」
「そうか。まだ、記憶は戻ってないのか。俺は能力者育成期間山梨支部防衛局護衛部隊部隊長兼、武田家の当主を任されている武田信玄だ。そして、付け加えると[レジスタンス]のメンバーでもある。仰々しい名が並んでいるが気にするな。俺は俺達家族はお前がいなければ、こうして生活も出来なかっただろう。お前は覚えていないだろうが、俺自身も、妻も子供達もお前に命を救われた。だからこそ、俺の出来る限り、お前の命は守ると勝手に決めた。記憶を失う前のお前には拒絶されていたが、俺は止める事はしない。守らせて貰うぞ。この命にかけて、お前の命を救う!」
「……は、はい。(過去の俺は何をしていたんだろ?)」
武田のその熱意を受け、否定も許されなかった廉は戸惑いながら、記憶を失う以前の過去の自身について考えようと頭を悩ませたものの、思い出せる訳も無く、断念する事となる。
「木山、どうだ。調子は?」
突然、廉との距離を詰めた武田は唐突と話しかける。
「……調子は良いですよ」
「そうか。……だが、春夏冬と一緒に居るとは思わなかったぞ。どこであった?」
「イギリスですよ。幻魔討伐の時に一緒になって」
「……ここに居るって事は倒したんだな?」
「ええ、何とか」
「流石は木山だ。強くて何よりだ」
「……えっと、[レジスタンス]のメンバーの二人もフランスのこの空をどうにかするために?」
廉のその問いに武田よりも早く雲雷は答える。
「最初の任務はパーティー会場の外の護衛を任されていたんですよ。でも、気づいたら、空は真っ黒に染まったんで、どうしようかと思っていた所に、兄貴の悪霊が見えたのでここに来たんです」