第800話 フランスを覆う魔手
廉と秋人の二人はエリザベス女王の指示によって、フランスまで、転移魔法によって、移動を完了させられていた。
「ここがフランスか……何か、暗くね」
到着したと共に、明るさを全く感じない辺りを見て廉は呟く。
そんな廉に空を見上げた秋人が続く。
「リーダー。暗い理由は空にある様です」
秋人のその言葉に促され、廉は空を見上げ、それを目にする。
フランス全体の空は全て、黒いオーラに包まれ、無数の黒い魔手が蠢いていた。
「何だ。あれ?」
「分かりませんが、一つ言えるのは、俺とリーダーが同時に吸収しても、全てを吸収することは絶対に不可能と言えます」
「……そうだよな。俺達はどうすれば?」
「取りあえず、状況が分かりません。仲間と合流しましょう」
「[円卓の騎士団]の仲間が居るのか?」
「居るかもしれませんが、もう仲間として認識されないでしょう」
「そうなのか?」
「はい。リーダーの記憶が戻り、[レジスタンス]に戻るまでの期間の限定でチーム[ダイヤ]のリーダーをしてましたから」
「でも、記憶は戻ってないぞ」
「女王陛下のお許しを頂いたので」
「それで良いのか?チーム[ダイヤ]のメンバー達はアメリカに行った様だけど」
「大丈夫です。あいつらなら」
「そうか。それで[円卓の騎士団]のメンバーでなければ、誰なんだ?」
「[レジスタンス]のメンバーの二人がフランスに居るみたいですから、それにアメリカの特殊な任務を終えた庄司も来れるそうですから」
「[レジスタンス]のメンバーか。昔の俺と出会ってたりするのか?」
「ここに居る二人の内、一人の武田信玄は昔のリーダーと行動を共にしてましたよ」
「……会っても、思い出す事は出来ないかもな」
「今は仕方ありません。いずれ、思い出す時が来ますよ」
「それでどこに行くんだ?」
「どこに居るのか分かりませんが、こちらの場所を伝える事は出来ます」
そう告げた秋人は右手から黒いオーラを放出させ、悪霊の様な存在へと変化させると、空へと放ち、無数に存在している黒い魔手を吸収していく。
「……俺の能力を知っているからこそ、これを見ればここに向かってくる筈です」
「なるほどな。でも、気づくのか?」
「気づくと……良いのですが」
二人の不安は的中する事無く、フランスに来ていた[レジスタンス]の二人のメンバーは秋人と廉の元に向かっていた。
「兄貴がここに来ているなんて、イギリスの増援かな?」
立花雲雷は共に走る武田信玄に確認を取る。
「あいつも独断で行動出来る身軽な身ではあるまい、増援だとは思うがな」




