第798話 解けた幻覚
彩美は無言のまま、スカーレットの後に続く。
幻影魔王の右側ににスカーレットは移動を終えると、右手から黒いオーラ、白いオーラを同時に放出させる。
「ゼブラ・ストライク」
圧縮した黒いオーラと白いオーラが混合したその一撃は圧縮され、幻影魔王の胴体を貫いた。切り離された下半身は下へと落下していき、彩美とすれ違う。
彩美は右手に纏わせていた雷属性の魔法を幻影魔王の首へと放つ。
鋭いその雷は幻影魔王の首を簡単に落とすと、幻影魔王の体を覆っていた藍色の鱗はエネルギーの塊であった事もあって、秋人の悪霊の様な存在によって吸収されていく。
やがて、幻影魔王の体は人のものへとなっていた。
廉は炎神の魔剣をただの人となったそれに剣を向け、吸収を始める。
肉体は吸収されなかったものの、体内にあった球体の様なものを吸収したと共にこの世から幻魔は消え、幻魔によってかけられていた幻覚が全て解かれる。
世界各地でその被害は多い。そして、この場に居たスカーレット、ドレア、彩美は幻覚によって、書き換えられた記憶を取り戻す。
全ての記憶を取り戻す取り戻したスカーレットは直ぐ様、地上に居るドレアの元に戻る。
「……ドレア……嫌、彩佳と呼んだ方が良いかしら?」
偽名であるドレア・ドレスではなく、加藤彩佳と呼ぶのか尋ねる。
「……彩佳?」
ドレアの返答よりも早く、その名前に驚いたルーナは声を漏らしていた。
「……これからもドレア・ドレスとして動くつもりよ。ルーナの様な人間も居ると思うから」
「了解したわ。それよりも思い出したわね」
「ええ、アメリカに行きましょう。アレックスの思惑のまま進んで居るわ」
「このまま行くと、アメリカに五人しか居ない大将を二人も失う事になる」
スカーレットとドレアの会話についていけなかったルーナは呆然と眺めていた。
「ルーナ。一緒にどうかしら?」
「行かせて貰います」
ドレアの提案にルーナは即答し、ドレアは直ぐにでも彩美に目を向ける。
「……取りあえず、幻魔の討伐は終えた。皆、女王陛下の元に来てもらう」
秋人のその話を聞いて、スカーレットは直ぐに秋人の元に移動する。
「悪いけど、直ぐにアメリカに帰らせて貰うわ」
「何故だ?」
「……詳しくは言えないけど、アメリカの軍事力に影響が出るからと言っておきましょう」
「事と次第によっては、女王陛下は増援を送るかもしれないぞ」
秋人のその提案はスカーレットとしても、有難いものだった。
秋人や廉の様な吸収が出来、魔属性に耐性のある人間が増援としてアメリカに来てくれるなら、アメリカの危機を救うのに役立つ。廉や秋人が来れなくても、増援の話はスカーレットととしても、お願いしたいものだった。




