第797話 弱き幻影魔王
十鬼シリーズは造られた順序によって強さが変わる。造られた順序は拳魔、水魔、炎魔、幻魔、風魔、雷魔、封魔、業魔、神魔、極魔であり、幻魔の強さは十鬼シリーズの中でも四番目とされているが、異能を抜かれた木山廉の父親、木山ゲンマの体に球体を入れ、霧の拡散の能力を儀式で入れ込んだ事もあって、四番目の強さとされた幻魔は現在最弱とされている。それでも、強力な幻覚がある事で幻魔の脅威は世界共通で知られていた。しかし、ここに魔属性を受けない体質とエネルギーを吸収出来る二人が居た事が幻魔の敗因となった事は言うまでも無いだろう。
「……リーダー!決めて下さい」
秋人のその叫びを聞いた廉は炎神の魔剣を強く握り締め、幻影魔王へと斬りかかる。
幻影魔王は右腕で防ぐものの、すぐさま切断され、幻影魔王の体に炎神の魔剣が触れる。
両腕は簡単に切断されたが、幻影魔王の体は硬く、切断が出来ずにいた。
「……ここで決める。出来るか、出来ないかじゃあねぇ。やるしかねぇよ。そう思えたんだ。だったら、出来るさ。今の俺なら」
廉の全身から黒いオーラが放出されると、全て幻影魔王を包みエネルギーを吸収していく。
「……リーダー」
秋人がみかねて、廉の助太刀に入ろうとしたその時、幻影魔王の幻覚にかかっていたスカーレット、ドレア、ルーナ、彩美が正気を取り戻していた。
(……そうか。俺とリーダーの吸収によって、幻影魔王の幻覚が維持出来なくなったのか)
秋人は四人の元に駆け寄る。
「……幻覚が解けたようだな。早速で悪いが、やって貰いたい事がある」
秋人の呼び掛けにスカーレットは周りを見渡し把握する。
「……木山廉。幻影魔王の両腕を切断した……ここまで来たら、木山廉の勝利に見えるけど」
スカーレットは見えている状況から察し、助太刀の必要性の無さを秋人に問いかける。
「見た目はな。これ以上、リーダーに負担はかけられない」
「それで、どうすれば良いの?」
「幻影魔王の体力を根こそぎ奪って貰いたい。具体的には、スカーレット・クイーンの対極魔法と、加藤彩美の切断力のある雷属性の魔法によって、幻影魔王に攻撃をして貰いたい。勿論、リーダーに被害が及ばぬ様に」
「……それぐらいなら、直ぐにでも」
「頼む」
スカーレットは直ぐに飛行を開始させる。
直ぐに動いたスカーレットとは違い動く様子の無い彩美は廉をただ見つめていた。
「何者なの?」
「……チーム[アブノーマル]のメンバーなら分かる筈だ」