第792話 スカーレットの一撃
ゼブラ・ストライクは圧縮され、放たれてから真っ直ぐ放出されるのに対して、カオス・インパクトは広範囲に放出される。そんなカオス・インパクトは幻魔の体の全てに直撃した。
魔法のみではあるが、世界一の攻撃力を誇るスカーレットの対極魔法のその一撃によって、カオス・インパクトに接触した建物、地面はえぐられ、幻魔は倒れ込んでいた。
「……凄い威力だな」
「ええ、攻撃力で最強の女、魔法でのみ最高の攻撃力と言えば、必ずしもスカーレット・クイーンの名が必ず上がる位ですから」
「……これで終わりだよな」
「ええ、見てください。幻魔の体はもうボロボロです。ここからの復活は無理でしょう。リーダー、吸収して終わらせてください」
「あぁ、終わりにするよ」
廉は瓦礫の山に横たわる幻魔を見つめる。
魔力で覆われた藍色の鱗は所々、ひび割れ、肉体が見えていた。
「……これは父さんの体なのか?」
廉がその疑問を抱いた時、幻魔の体は一瞬で霧に変化する。
「バカな。まだ動けるのか?」
霧の拡散を発動させた幻魔に驚きを隠せない秋人は直ぐに廉の元に駆け寄る。
「大丈夫ですか?リーダー」
「あぁ、大丈夫だ。どうなっているんだ?」
「……十鬼シリーズは全て第二形態が存在していると聞きます。まさか、幻魔も第二形態になるかもしれません」
「……第二形態になるとどうなるんだ?」
「第二形態は姿が変わるのは勿論ですが、魔法、能力、異能が進化します」
「……幻魔は魔法の幻覚。そして、能力の進化だから、能力向上か覚醒か」
「魔法と能力を所持している時点で魔法の進化は黒魔術:幻術のみです。魔法のみなら黒呪術になりますが、能力があることで黒魔術までです」
「となると、能力の能力向上か覚醒だな」
「はい。能力向上の場合は進化前の進化後の二つを同時に使用出来ます。そして、覚醒の場合は進化前の能力は使えなくなりますが、覚醒後の異能を使える様になります」
「……どっちにしても、厄介だな」
廉と秋人の二人は幻魔の第二形態に警戒をしている中、女四人は集まっていた。
「……私の一撃で終わらせる事が出来ると思っていたけど……幻魔がここまでタフだったとは」
スカーレットは幻魔を一撃で倒せず、逃した事に苛立ちを募らせていた。
そんなスカーレットにドレアは近寄る。
「貴女に落ち度は無いわ。それにルーナの能力で拷問器具が周囲を囲っている以上ここからは逃げる事は出来ないわ」
「……霧を通さないのかしら?」
「ええ、妖術によって、エネルギーを吸収するからね」