第790話 指示
「十鬼シリーズは特殊な球体を死体に入れる事で、動いています。そして、今居る幻魔は見ての通り、人間とは認識出来ません。藍色の鱗に覆われ、鬼の様なその姿はエネルギーによって、固められた鎧の様な物でしょう。そして、俺とリーダーの二人の吸収でも吸収しきれない程、膨大です。幻魔自身にエネルギーを使わせ、空に近い状態でリーダーの吸収によって、球体ごと吸収出来れば、幻魔の力を得られるかもしれません」
「……結構むずかしいな」
廉のその言葉を否定する声が背後から飛んでくる。
「そうかしら?」
その声の方向へと廉と秋人は振り向く。
そこには幻魔の幻覚によって、脳に直接作用する幻覚を受け続け、立つことも出来なかった四人の女性の姿があった。
「……話はおおよそ聞いていたわ。でも、何故木山廉に最期を託しているのかしら?」
スカーレットのその疑問に直ぐに秋人は返答する。
「十鬼シリーズは敗北や体が動けなくなる。または封印されそうになると、肉体を捨てて、体内から球体が出現し、転移魔法でどこかへ消えると聞く。つまり、球体をどうにかしなければ、永遠にいたちごっこだ。それを避けるにはリーダーの吸収によって、球体を吸収して貰う必要がある」
「……理解は出来たわ。それなら、幻魔を瀕死の状態にしてから、吸収したらどうかしら?」
「……確かに、なんの抵抗もなければ吸収もしやすいが、それが出来たら、苦労は無い」
「……貴方達二人は幻魔の幻覚と能力である霧の拡散を使われない様に幻魔の放つエネルギーを吸収して、女四人で、幻魔の動きを封じて、瀕死まで追い込むわ」
「……了解した」
秋人は今まで溜め込んだエネルギーを上空へと解き放ち、再び幻魔からエネルギーを吸収出来る様な常態を作り上げる。
「俺も吸収に回った方が良いか?」
「いえ、俺一人でやりますよ」
秋人幻魔の周辺に悪霊の様な存在を配置する。
「……四人で連携して、幻魔を倒すわ」
スカーレットのその提案にルーナは食いかかる。
「何故、お前が仕切っている?」
「不満かしら?」
「不満だから、言っている」
「どうすれば、良かったのかしら?」
「ドレア様が指示すれば、全て丸く収まる」
ルーナのその言葉を受け、ドレアは前に出る。
「ルーナここは引きなさい。私は彼女の指示に大人しく従うわ」
「それは有難いわね。では、先ずはドレアとルーナの二人で幻魔を拘束して貰うわ。その後は彩美にお願いするわ。雷切姫と呼ばれている貴女なら、幻魔の体の切断を任せられるわ。幻魔から警戒されるまで攻撃を頼むわ。その隙をついて、私が一撃で仕留めるわ」




