第785話 手数な警備
「分かったわ。私もルーナもアメリカ軍に所属するわ。それで良いのでしょう」
ドレアのその決断はそうせざるを得なかった。
幻魔に次の体として狙われるドレアはイギリスに敗北した時点で、管理する神からは見放され、今後生き延びても管理する神やイギリスを初めとした各国から狙われる事になる事は明らかだ。
そんなドレア、ルーナにとってはアメリカ軍のスカーレットのその提案はとても魅力的な話である。ルーナをこのタイミングで連れ出せるのもドレアとしても、優先させたい事であった。
イギリスとの交換条件でルーナの身の安全と幻魔の討伐が天秤にかけられているドレアは幻魔を倒した後でルーナを殺害されるのでは、と言う考えが少しばかりか頭にあり、それが唯一の不安でもあった。
そんな状況で、ルーナを人質から開放出来るのなら、それは有難い事だった。だからこそ、ドレアはスカーレットの提案を了承した。
「では、救出しましょう。貴女はどうする?」
ドレアとスカーレットの二人で進められたルーナの救出のその話で唯一入って居なかった彩美にようやく、話が振られる。
「確認しますけど、これは犯罪なのでは?」
「……そうね。それを踏まえてどう?」
「ここで待ってます」
「……それが良いわね。イギリス兵、[円卓の騎士団]を相手にするには経験不足かしら」
「……はあ?これでも日本の北海道支部じゃあ、雷切姫と呼ばれている女よ。馬鹿にしないで」
「したつもりは無いけど」
「私も行くわ」
「さっきの言葉は撤回するわ」
「関係無い。私はもう行くと決めた」
「……分かったわ」
彩美の勢いにスカーレットは諦める様に了承する。
ルーナが囚われているのは、頑丈な建物や警備等は無い民間の建物に捕らわれていた。
「……武装したチーム[シールド]のメンバーが三人ね」
ルーナが捕らわれているとされるその建物を取り囲んでいる人数と素性を的確に二人に伝えたスカーレットは警備人数の少なさと、リーダーであるガラハッドの不在が気掛かりだった。
「……警備が手数ね。それにしても三人とも動きがぎこちないわ。そして何よりも、指揮官であるリーダーとなる存在が居ないわ」
スカーレットも感じた疑問を的確に告げたドレアをスカーレットは称賛する。
「見事ね。統率が取れていないあの三人から一人の少女を救出するのは、簡単な事ね」
「そうね。三人は地上のみで、上空には時々目を向けるのみ。二階から侵入出来そうね」
「侵入方法については、異論は無いわ。でも、中の状況はなにも分かってないわ」