第784話 欲しい
幻魔と戦いを行う廉と秋人とは別行動をしている。スカーレット、ドレア、彩美の三人は幻魔から遠く離れた場所に居た。
「正気?」
ドレアはスカーレットからのその提案を受け、戸惑いを隠せなかった。
ドレアは管理する神の傘下のチーム[カオス]のリーダーである。元々は日本を拠点でチーム[ゼロ]と共に活動していたが、イギリスを担当していたチームが[円卓の騎士団]によって、壊滅されその代わりにチーム[カオス]がイギリスの担当することになり、僅か数日で[円卓の騎士団]に敗北。リーダーのドレア、副リーダーのルーナ・アルジャナースのみが生存、それ以外の約五十名は死去した。
スカーレットが提案したのは、外に出れているドレアとは違い、囚われているルーナを救出すると言う提案だった。
しかし、ドレアはその提案に手放しで喜ぶ事は出来なかった。
ドレアが外に出れているのは、ルーナを人質として幻魔を倒す様に言われているからであり、ドレアがイギリスに残る理由もルーナの為だけと言える。ルーナの救出が出来るなら、ドレアは二人で逃げる事を選んでいる。
「……どんな裏があるのかしら?」
「ルーナ・アルジャナースを助けるわ。その変わり……二人ともアメリカに来てもらうわ」
「面白い冗談ね」
「……冗談に聞こえた?」
「私はそう理解したわ」
「……そう。ドレア・ドレス、貴女も馬鹿では無いでしょう?分かっている筈よ。貴女が努力して、幻魔を倒そうが倒せなくてもルーナ・アルジャナースの命は無いわ[円卓の騎士団]の各リーダー達の大半は若者が担い甘い人間も多いわ。アーサー・グラフェリオンが良い例ね。でも、イギリスの上層部が、イギリスに対してここまで攻撃を仕掛けたチーム[カオス]を野放しにはしないわ」
「それで、貴女は私とルーナをアメリカで匿うと?」
「そうよ。私は貴女が欲しい。ルーナ・アルジャナースはついでよ。それで貴女が手に入るなら、私はどんな事でもするわ。そこまでしても私は貴女を手にしたい」
「……確証もないそんな話、どう信じろと?」
「アメリカに来ないなら、二人とも殺すわ!」
「いきなり、物騒ね」
「……なんてね。私は貴女は殺せないわ。ルーナ・アルジャナースなら、殺せるけど」
「貴女もルーナを人質とするのかしら?」
「そうよ。私は幻魔なんてどうでもいい。記憶が幻魔の幻覚によって、随時消され、部下だった貴女の事は写真のみでしか確かめようも無いけど、それでも無性に貴女が欲しい」