第780話 霧の拡散(ミスト・ディフュージョン)
「……それはどうでしょう?スカーレットの一撃は勝負を一瞬で決める事は出来るでしょう。でも、当てる事はまず出来ません」
「言い切るのか?アメリカの大将の一人なんだろう?」
「はい。それでもです。幻魔は触れる事すら出来ないと言われる程攻撃を当てるのが困難な相手です。幻覚で自身の姿を隠し、霧の拡散によって、体を霧へと変化するその体に攻撃をヒットさせるのは難しいです」
秋人のその言葉を受け、攻撃を避けられたスカーレットが不機嫌そうに近寄ってくる。
「ではなにかしら、貴方なら幻魔に攻撃を当てられるのかしら?」
「……体力やエネルギーの吸収位は……攻撃を当てずとも勝利する方法はあります」
「聞こうかしら」
「リーダーの吸収です」
「リーダー?」
「いずれ、[レジスタンス]を率いる木山廉なら、あの霧を吸収することが出来ます」
「……幻覚はどうするの?」
「リーダーは魔属性を一切受けない体質ですから、問題有りません」
断言した秋人に廉は近づく。
「頼りにしてくれるのは嬉しいけど、魔属性を一切って言っても、多少は食らうと思うけど」
「そうなんですか?」
「昔の俺はどうだったんだ?」
「俺の能力も魔属性なんですけど、一切受け付けていなかったですよ。もしかしたら、記憶を失って、魔属性を一切受けない体質と異能が変化したのかもしれません」
「……マジか……幻魔の霧を吸収出来ないかもな」
「……スカーレットに訂正してきます」
「悪いな」
廉とのその会話を受け、秋人はスカーレットに駆け寄り
「さっきの話は聞かなかった事にしてくれ」
「……えっ?」
「昔のリーダーなら、幻魔ぐらい倒せたが……記憶を失った事もあって、無理な可能性がある」
「……大したリーダーね」
「なんだと?」
「……とにかく、幻魔に有効な攻撃手段を模索しましょう」
「了解した」
「そこで提案があるのだけど」
「……聞こう」
「男子と女子で分かれ、二手で攻めない?」
「(……確かにその方が効率が良いか。俺としてもリーダーと組めるなら、文句は無い)分かった。それで構わない」
スカーレットは秋人から直ぐに離脱すると、彩美、ドレアと共に転移魔法でどこかへと転移した。
(どこへ行った?)
移動場所も告げられなかった秋人のその疑問は当然なものだろう。
秋人は一人残した廉の元へと駆け寄る。
「悪いな。昔の俺なら、こんな事にはなってなかったんだよな」
「……そうかもしれません。でも、それを今言っても、変えようの無いことです。今のリーダーで変えられる事をしましょう」
 




