第773話 降り注ぐ絶望
「俺は悪くない。俺は……そんな事をしたかった訳ではない。俺はフランスの為、人の為に動きたかったんだ」
「何をぶつぶつ言っている?」
「俺は知らない!こんなのは現実じゃない」
「……おい!ふざけているのか?ローラン・アルガスト!」
「……助けて、助けてください。許してください。恨まないで下さい。怒らない下さい。……一人に、一人に……なりたい」
ローランのその様子を見て、モルドレッドは縛り続けていた影を消し去る。
「良いのか?」
アルバーのその言葉にモルドレッドは諦め混じりに答える。
「……こんなのを拘束していて何になる?」
「大分、壊れているな。オリヴィエ・シュヴァリエにジャンヌ・ストラーダの処断を止めるように焚き付けたが……これをオリヴィエ・シュヴァリエがやったと思うか?」
「それは無い!絶対にな」
ローランは拘束が解かれた事によって、再び走り出す。
「追わなくて、良いのか?」
「追って、どうなる?」
「そうだな。それにしても、ローラン・アルガストに何があった?」
「……ローラン・アルガストの次だ。先ずは上空全てを覆う黒いオーラから
だ」
「上空?」
モルドレッドのその言葉を確かめる様にアルバーは空を見上げる。
空は黒く染まり、何かが蠢いている様に見てとれた。
そして、空から黒いオーラが竜巻を起こしながら、幾つも、フランスへと落ちていく。
「……どうやら、攻撃を受けているようだな」
「このまま、ここに居たら、危険だ。どうする?モルドレッド」
「……ローランの身に何があったのか、そして、誰からの攻撃なのか確認する」
「了解した」
二人は黒いオーラが最も降り注ぐ場所へと移動を開始させた。