第763話 真夜中の侵略者(ナイトメア・インベーダー)
「真夜中の侵略者……やられたな」
レオナルドは自身の死神の魔剣でも無力化する事の出来ないこの状況と、聞いていたザザスの異能である真夜中の侵略者が酷似している事で現在の状況がザザスによるものだと素直に認める。
真夜中の侵略者は発動中、辺りは朝であろうと、夜へと変化する。そして、夜の中居る者はザザスの侵略を防ぐ事が出来ないとされ、逃れる方法は夜を朝等、夜以外にするか、ザザスの特殊な侵略を己の力のみで解決するしかないとされる。
今のレオナルドに夜を朝に変える力がある訳も無い。
「死神の魔剣が無力化する力よりも、ザザスの真夜中の侵略者の方が上って事か」
レオナルドは死神の魔剣によって、生成された悪霊の様な存在がザザスの真夜中の侵略者に簡単に操作されている事から、レオナルドはそう確信する。
「顔色が悪いぞ」
レオナルドはザザスの声がする方向に顔を向ける。
そこは空が無くなり、黒い天井の様な上空だった。その上空に無数のザザスがレオナルドに語りかける。
「……ご自慢の死神の魔剣はもう通じない。どうする?」
「……時間切れを待ちますよ」
「何?」
「真夜中の侵略者によって、夜に変化させる事が出来る時間は最長で二日だ!」
「……確かにそうだ。でも後一時間もあるぞ。それだけあれば、簡単に潰せる」
黒い天井の様な上空から垂れた黒い液体の様な物は地上に落ちると黒い煙を漂わせる。
「……それは吸わない方が良いぞ。後、体にも触れるなよ。腐食するからな」
ザザスのその警告を聞いたレオナルドは煙を避ける事はせずに死神の魔剣を構える。
「何のつもりだ?」
「僕は死神の魔剣の力を信じている」
「……現状を見ろ。お前が産み出した悪霊みたいなものは、今や俺が変えた悪魔となっている。つまり、お前の死神の魔剣は簡単に侵略を受け、姿を変える事が出来る」
「……だったら、何故、僕の体に直接侵略してこない?何故、死神の魔剣よりも優先順位の低い負の集合体を狙った?真夜中の侵略者で侵略出来るのは条件があるんだろ?だから、空や、負の集合体を選んだ。真夜中の侵略者では、僕自身と、死神の魔剣は侵略出来ない」
上空から垂れた黒い液体の様な物から漂っていた黒い煙と言う負は死神の魔剣に吸収される。
「……死神の魔剣の全力は最初から使うと、僕が追いつけないレベルなんだ。だからこそ、その力を分散させる為に死神の魔剣に溜まっている負のエネルギーを悪霊の様な存在として、外へ放出させている。そして、それはいつでも、死神の魔剣に戻す事が出来る」




