第755話 受け継ぐ
光と同等な速度で移動したアーサーはすれ違い様にアルフレッドの首を切りつけた。そして、首が跳ねられた死亡したキャサリンの姿を目にする。
アーサーはその亡骸に申し訳無さそうに立ち尽くす。
「早いな。全く見えなかったよ」
首を切断筈のアルフレッドからのその声にアーサーは動揺する事は無かった。何故なら、手応えの無さを感じていたからだ。
「……見えても無いのに、良く生きてましたね」
「そうか。知らないのか。チーム[シールド]のリーダーと全く同じこの盾、王者の神盾は俺が認識しない攻撃を防いでくれるんだよ。まぁ、認識できる攻撃はこの盾で防ぐがなぁ」
アルフレッドが認識出来る攻撃で、盾や剣に触れる事無く、アルフレッドの体に直接攻撃を当てなければ、アーサーに勝機は無い。
そんな、アーサーに引き寄せられる様に地面に落ちている伝説の聖剣がアーサーの目の前に独りでに移動する。
「……伝説の聖剣が自ら持ち主を選んだ?」
アルフレッドは目の前で起きた現象を思わず、口にしていた。
そんな、事実をアルフレッドを通じて、知ったチーム[レジェンダリー]のリーダーはアルフレッドの脳内に直接語りかける。
(……もう撤退して貰おう)
(何故、このタイミングで?)
(アーサーは聖剣に愛されている事が分かった。それだけで十分だ)
(……了解しました)
アルフレッドは疑問等はあったものの、チームリーダーの言葉に大人しく従う事にした。アルフレッドはアーサー相手に同等と背中を晒しながら、歩いていく。
「逃げるのか?」
「撤退命令が出た。お前と戦う理由は無い」
「僕にはある」
「……俺なんかと戦うよりも、倒さなければならない敵が居る筈だ。俺はもう行く」
「……どこに逃げようと、必ず貴方は僕が倒す!」
「そうか。お前は俺達の世界に足を踏み入れる事も出来ない」
「……世界?」
アルフレッドは背中を晒し続けており、隙だけだが、王者の神盾がある限り、アルフレッドが認識出来なかった攻撃は全て防がれてしまう事から、アーサーの高速で移動する攻撃も、背後からの攻撃も全て無力化されてしまう。目の前にいきなり現れても、アルフレッド程の手練れなら、簡単に対処されてしまうのは目に見えていた。
イギリスを守ると言う使命で動くアーサーは一人の敵であるアルフレッドよりも、多くの敵であるチーム[メメントモリ]が送り込んだ黒いオーラで造られた存在を倒す方がイギリスの平和に繋がる。
だからこそ、アーサーは任務を真っ当する。