第742話サムライ
雷鳴雷轟から放たれた雷は雲雷予想していたよりも凄まじく、武田が考えていたよりも凄かった。
雷鳴雷轟は受けたダメージを蓄積し、それを放つ剣である。今まで受けたダメージは黒づくめの男が投げた短剣を切りつけたのみであり、受けたダメージとしては低いものであるが、現在放たれた雷の威力は二人を驚愕させるには十分だった。
そんな雷に対応出来なかった黒づくめの男に直撃する。
「……殺したかも」
雲雷は雷の威力から、黒づくめの男を殺害してしまったと考える。
雲雷のみでなく、端から見てもこの雷に当たれば、ただでは済まない、最悪死んでしまったと思っても仕方ない程の雷だった。
「……その可能性はあるな」
武田のその一言によって、雲雷あたふたと戸惑いを隠せずに困惑していた。
そんな雲雷とは違い、武田は短剣が地面を割いて、刺さっている事に気がつく。
「有名な短剣なのか?」
地面から抜き取った短剣を眺め、武田はその短剣の切断力を確かめる様に近くの建物を軽くつく。しかし、その建物が切断される事は無かった。
「可笑しいな……そう思わないか?」
短剣の現在の切断力と、地面に刺さっていた時の切断力の違いに武田は雲雷に確認を取るように尋ねる。しかし、人を殺してしまったと不安がる雲雷の耳に届く事はなかった。
切断力の違いを何故か考える武田は黒づくめの男が立ち上がったのを見て、戸惑い続ける雲雷にそれを伝える。
「どうやら、生きている様だ」
「本当ですか?」
武田のその言葉に雲雷は飛び付く。
そして、雲雷は黒づくめの男を目にして、困惑する。
「……嘘だろ?」
人一人が死んでも可笑しくない雷を受けても、何事も無かったかの様に立ち上がった男を見て、雲雷は再び戦闘体勢を整える。しかし、それを武田が静止させる。
「待て、俺がやる。あいつは切断系統の力を持っている。ここは俺の創造神の物質の出番だ」
「……それじゃあ、武田さんに譲りますよ」
戦闘体勢に入った武田は創造神の物質を発動させる。創造神の物質はどんな事をして破壊不能な物質を造り出す異能である。破壊だけが出来ないものであり、衝撃を吸収する事等は出来ない。そんな物質で造られた鎧を身に纏い、剣を一本装備する。
その姿はまさにサムライそのものだ。
破壊不能な物質ではあるが、鎧の構造上、関節部分が鎧に覆われていない。つまり、関節部分の弱点となるが、それ以外なら、破壊不能な物質に覆われている事になる。
武田は破壊不能な物質で造られた剣を黒づくめの男に向ける。




