第738話 聖域の盾(サンクチュアリ・シールド)
「……」
「答えられないか。だったら、捕らえ、聞き出すまでだ」
ガラハッドは前方に聖域の盾を突き出し、走り出す。聖域の盾は前方の攻撃を完璧に防ぐ事の出来る盾であり、走り出したガラハッドを前方から止めることも、攻撃を加える事は出来ない。そんなガラハッドが切り裂きジャックへと突進をするように接近していた。
切り裂きジャックは短剣を無数に投げつけるものの、聖域の盾があるガラハッドには届くわけも無く、ガラハッドは聖域の盾を持ったまま、切り裂きジャックへと体当たりをする。
聖域の盾は前方の攻撃に対しては完璧な防御を持つ。そんな前方のみの防御に特化したこの盾に体当たりを受けた切り裂きジャックは後方の建物まで吹き飛ばされる。
ただ吹き飛ばされた訳ではなく無く、聖域の盾の特性を生かした攻撃となっていた。前方に居た切り裂きジャックの体を弾き飛ばしていたのだ。
「……情報によると不死者らしいな。こんなものでは死なないだろ?」
ガラハッドのその言葉に答える事は無いものの、切り裂きジャックは無言で立ち上がる。
「ここで負ける訳には行かない。あの場所に帰るのだ。あの楽園に」
「……楽園?」
「イギリスに居る人間を全員殺せば、帰れるとあのお方は言われたんだ。殺さないと」
「……楽園にあのお方……だいぶ、ボロを出し始めたな。この世とは別の所から来た様な口振りから察するに、そこが楽園かな?」
「殺す!」
「出来ないよ、それ。例え出来ても、イギリスにはアーサーが居る」
「……アーサー様が居る?」
「アーサー……様?」
「何故、あのお方がここに居られる?」
「……何を言っている?」
「アーサー様がこんな所に居る筈がない」
「居るが」
「会わせろ!」
突然、冷静さを失ったかの様に取り乱す切り裂きジャックを見て、ガラハッドは決意する。
「良いだろう。ただ、このまま連れていく訳にもいかない。そこで」
ガラハッドは魔法陣を出現させ、その魔法陣から魔法の鎖を取り出す。
「……条件としてこの魔法の鎖で縛り付けられると言うなら、アーサーに会わせよう」
「良いだろう。さっさとやれ」
その切り裂きジャックの言葉にガラハッドは疑問を抱く。
魔法の鎖に縛られた者は魔法、能力、異能を封じられる。この事を理解しているなら、切り裂きジャックがこんなに簡単に了承するとはガラハッドは考えてはいなかった。しかし、このまま行けば切り裂きジャックに魔法の鎖を縛り付ける事に成功する可能性がある。