第737話 二人目の切り裂きジャック
切り裂きジャックはどこから取り出したのか悟らせる事なく、短剣を取り出す。その短剣を直ぐ様ガラハッドへと投げつける。
チーム[シールド]のリーダーを務めるガラハッドは護衛任務を主に受け持っており、防御に関する事ならイギリスでガラハッドの右に出るものは居ないだろう。そう言われる理由の一つに聖盾の神器を所有している事にある。
ガラハッドは出現させた魔法陣に右手を入れ込むと聖盾を取り出す。
ガラハッドが所有する聖盾は聖域の盾と呼ばれるもので、盾で防いだ前方のみだけであるが、確実に防ぐ事が出来る反面、後方の攻撃に弱いと言う弱点を持つ。短剣は真っ直ぐガラハッドに向かってくる以上、前方の攻撃を完璧に防ぐ事の出来る聖域の盾がある限り、確実に防ぐ事が出来る。そんな盾で防御体勢を取ったガラハッドはそれに留まる事なく、盾の前方に魔法陣による防御壁を出現させる。
聖域の盾のみで防げる攻撃に対して、魔法陣による防御壁を用意したのは、フランスに居るモルドレッドからの報告による切断系統の力を見極める為に出現させていた。
目の前に居る切り裂きジャックがどのような力を持つのか、現段階では正確に把握出来ていないのが現状だ。そんな中でもあらゆる可能性を模索して、的確に対処をするのがガラハッドである。
ガラハッドがここまでの防御を終えたのは僅かな時間である。そして、ようやく短剣は展開していた魔法陣の中心へ突き刺さる。この瞬間、魔法陣は破壊される。この時にガラハッドは魔法陣の破壊のされ方を見逃す事は無かった。魔法陣の中心に当たった短剣は魔法陣の中心を破壊してガラハッドに飛んできた訳ではなく、魔法陣の中心に当たった直後、魔法陣は真っ二つに切断されていた。この事から目の前に居る切り裂きジャックはフランスに現れた切り裂きジャックと同じ切断系統の力を有していることを把握する。
魔法陣の切断を終えた短剣はガラハッドが手にしている聖域の盾へと直撃するものの、直ぐ様弾かれてしまう。
切り裂きジャックは驚きを隠す事が出来ずに戸惑っていた。そして、気がついた時には切断出来ない理由をガラハッドに尋ねていた。
「……何故、切断出来ない?」
「それはこの盾が聖域の盾だからだ」
「なんだそれは?」
「……盾としては有名なものだと思うが……知らないのか?」
「……知らない。ここに居るものは弱き者しか居ないと聞いていた」
「ここに居る者?……こことは別の所から来たと言っている様だよ」




