第73話 怒りの覚醒
「お前ら、全員俺の奴隷にしてやる。生きたまま、あいつら抵抗もしなければ、声も出さない。実につまらなかった」
「ふざけるなぁ」
八重さんは黒影の槍を男に向かって突き刺す。
しかし、男は避ける動作はせずに竜の手となった右手で簡単に掴み取った。
男は槍を引き寄る。それによって八重さんは抵抗出来ず、男の目の前まで移動させられた。
「女は弱いな」
八重さんは腹を蹴られて吹き飛ばされる。
八重さんは腹を押さえ、蹲っている。
男は手にした黒影の槍を無造作に投げつける。
黒影の槍は地面に落ちると共に影に戻り、八重さんの元まで移動すると八重さんに影が戻る。
「女何てこんなものだ。強者にはケツを振ってれば良いんだよ。女の能力者何て雑魚しか居ないんだよ」
許さない。
私は八重さんの元に走る。
「おいおい、女の友情ごっこか?」
男の言葉一言一言に私の体が反応する。
「八重さん。大丈夫ですか?」
「……えぇ。何とかね」
「後は私が」
「頼めるの?」
「……任せて下さい。倒します」
「お願いね。皆の仇を……」
八重さんは言葉の途中で目を閉じてしまった。
私に任せて下さい。必ず八重さんの想いを無駄にはしない。
悔しかったはず、八重さん自らあの男を倒したかったはず、それでも私に託してくれた。私は必ずあの男を倒す。
私は地面に手に変え八重さんを包む。
浴衣ちゃんも地面で造った手で包む。
これで安心して戦える。女の子達を物として扱い蔑んだ……許さない。許せない。体中に力が溢れる。体が軽くなる。
あの時と同じだ。
お母さんがお父さんに殺された時と同じ……女性を痛め付ける何て、許さない。
「……これが私の覚醒だ」
私は叫ぶ。
それと同じに黒いオーラが私の体から溢れる。
溢れだした黒いオーラは黒い風として辺りに吹き荒れる。
「覚醒?そんな……都市伝説だろう?それは……」
黒い風に耐えきれず男は転げ回る。
この男は許さない。女の子達を侮辱しすぎた。
私はリュックからペガサスのぬいぐるみを取り出す。
今なら分かる。この中にお母さんが居ることを……
「教えてあげる。私の神の義手の覚醒をこの神の異形な手を」
私はペガサスのぬいぐるみを手に変える。
ペガサスのぬいぐるみは布の手に変わらず、悪魔の手に変わる。
「何だ……それ?明らかに能力からかけ離れている。これが覚醒?」