第72話 覚醒の兆し
私の周りを無数のドラゴンが囲う。
幸い瓦礫の山を手に変える事が出来る。
先ずは瓦礫の山を全て手に変えて、次に地面を手に変えよう。
その場にある全てを手に変えれば、無数のドラゴンと男一人を握り潰すのは簡単な事、この男はチーム[カオス]の女の子達を殺した男手加減はしない。
私は瓦礫の山、地面を手に変える。
「……手に変化させる能力か」
私は造った手を伸ばし、ドラゴン達を全て握り潰す。
造り出した手はまだ余ってる。余裕だ。
……ドラゴン全てが握り潰されているにも関わらず男は余裕そうに笑う。
「この程度か?」
男がそう言うと二足歩行のドラゴンと四足歩行のドラゴンが無数に現れる。
少しヤバイかも……
地面から既に出せるだけの手は出し尽くしている。
もう瓦礫は無いし、ここは本体を狙う。
この男の竜の兵隊の能力が竜を造り出すだけの能力なら本体は弱いはずだ。
私は新しく出てきたドラゴン達を狙わずに男に狙いを定める。
「無駄だぁぁぁぁ」
一体の二足歩行のドラゴンが男の右手に抱きつく。すると、男の手は竜の鱗を纏う。竜の手となった男は私が伸ばした手をいとも簡単に破壊した。
私の神の義手は元になった素材で強度が左右する。
この場に瓦礫以上の物は見当たらない。今の私にはあの男の竜の手を超える手を造り出す事は出来ない。出来るとしたらそれは……覚醒だ。あの時の様に全身から黒いオーラを出し、全身から力が溢れる様になればペガサスのぬいぐるみをお母さんの悪魔属性の手を造り出す事が出来る。けど、私は自在に覚醒に至る事が出来ない。八重さんと浴衣ちゃんは影の中で様子を伺っているはずだ。少しでもあいつの隙を突く事が出来れば……
「おいおい。またその手かよ」
男は呆れた様に告げた。
構わない。時間を稼いであいつの弱点を見つける。
「大人しく。俺の奴隷になれよ。前に来たあの雑魚達の様に」
「奴隷?」
「前に来た奴等は死んだ後俺の性奴隷になったよ。まぁ腐ったからドラゴン達に食わせたけどな。だから、新しい女が欲しかった色々溜まってるからなぁ」
性奴隷?
………はぁはぁはぁ
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
「……おい、どうした?」
「この感覚だ」
「あっ?」
この感覚……覚醒だ。
私の体中が叫んでいる。
目の前の男を殺せって……
「お前も中々の女だ。あいつら以上に可愛がってやる」
……槍の形をした影?
まさか……
影の中から勢いよく槍を手にした八重さんが飛び出す。
その勢いに負けてか浴衣ちゃんが転がりながら出てくる。
出てきた八重さんは男の死角ではなく、真横だ。
簡単に避けられてしまう。
「……おいおい。どこから出てきあがった?」
「許さない。お前は皆の仇、私が倒す」
今の八重さんは明らかに冷静さを失っている。
前の任務で唯一生き残ったからこそ自身の手で倒したいんだろう。
サポートだけでもしないと……
浴衣ちゃんは?
転がって影の中から出てきた為目が回っているみたい。
ドラゴン達は私の神の義手で押さえている。新しく出てきたドラゴンも握り潰しておこう。
これで浴衣ちゃんも大丈夫だ。
八重さんのサポートに回ろう。
……私は両手を見つめる。
……覚醒が止まった?




