第713話 閻魔羅王(えんまらおう)
「……お前は強者だ。認めてやるよ」
笑みを溢したゼウスを中心として突風を吹き始める。
すると、ゼウスの背後から高波が突然出現する。
「確か、山梨支部には海は無かったよなぁ。関係ねぇか、日本はいま水没する」
大量の水が日本を覆う程溢れ始めようとしていたが、閻魔大王を出現させていた事によって、水は直ぐに蒸発していた。
「……悪いが、世界一の高温、温度を誇る閻魔大王を目の前に、水、氷等は直ぐに蒸発する。それが理解出来ない程、愚かでは無いだろう」
「知識とは違い、体験したかったんだよ。お前の強さを知りたいからな」
「……では、全力を見せるとするよ。貴方相手では持久戦をするつもりはありませんから、短期決戦といかせて貰いますよ」
エンマのその言葉と共に背後に居た上半身のみの閻魔大王は両手を地面に接触させ、勢い良く、両腕を伸ばし、閻魔大王は全身を現す。
「閻魔大王の能力向上は貴方でも迂闊に攻撃はできませんよ。閻魔羅王は貴方の罪を見逃しませんよ。これ以上、罪を重ねないことをオススメしますよ」
エンマはゼウスに忠告を言い残すと、ゼウスの元へと走り込む。
その時点でゼウスは閻魔大王との違いを理解する。今までは上半身のみだった閻魔大王は全身で存在しており、随時エンマの背後でしか居なかった閻魔大王だったが、閻魔羅王となった今はエンマが移動しても動く事はなく、立ち尽くしていた。それに加え、エンマ自身が熱を発しており、その温度は閻魔大王と全く同じ温度であった。
「……なんの躊躇もなく、近付いて来るとは……何かあるな」
ゼウスは近づいてくるエンマに警戒をしながら、接近してきたエンマに右手に握られた槍状の雷を投げつける。投げつけられた槍状の雷は凄まじい早さでエンマの顔面を捉える。
エンマは槍状の雷を受けたにも関わらず、ゼウスに接近をはたし、右拳を振るいゼウスの右頬へと当てる事に成功する。
肉体から雷へと化したゼウスは物理攻撃を一切受けない体となっているにも関わらず、エンマの攻撃は閻魔大王と同じく、ゼウスに問題無く攻撃を当てる事が出来ていた。
「……閻魔大王とは違うなぁ。能力向上しているから、当たり前か……閻魔羅王と言ったなぁ。お前が受けたダメージは閻魔羅王が受けていたなぁ。そして、お前は閻魔羅王の力をその体で体現している。罪を許さず、罰を与える閻魔がサンドバッグか?お前が受けたダメージを受けた閻魔羅王は俺様を睨んで終わりか?」
「閻魔羅王が動く時、罪人は裁かれる。その時は間も無く訪れる」




