第710話 遅れてきたエンマ
「俺が勝てる相手では無かったな」
「……遺言を聞くつもりは無い」
「気にするな。独り言だ」
「直ぐに終わりにしてやる」
ゼウスが雲雷の命を断とうしたその後時、ゼウスは気がつく。
「……檜山家の次期当主のお出ましか。現当主でなかったのが、残念であるが……お前をいたぶれば、あるいは殺せば、現当主であるお前の父はここに来るのか?」
「どうでしょうか?エンマ、ゲンマの二人は木山家、檜山家を守るため、残っています」
「……そうか。では、二人を殺し向かうとしよう」
「雲雷。ここは任せて、逃げて」
次期エンマの名を襲名する事になっているエンマの息子であるその言葉を受け、雲雷はその場から離脱する。それはエンマの能力が発動すれば、雲雷も巻き添えになることは雲雷も理解していることだった。
「あれを逃がして、どうなる?山梨支部に居る以上死ぬ事になる。俺様が本気を出せば、日本を崩壊させる事など造作もない」
「そんな貴方にも、初めて出来た弱点がある。それを取り戻す為にここまで来たのでは?」
「弱点とは言えない。だが、炎属性の攻撃を受けるのも、攻撃が出来なくなるのも不便でなぁ。火災や噴火等、俺様は気にいっているんだよ」
「それが無くても、十分に貴方は強い」
「その通りだな。だが、それが諦める理由にはなっていない。俺様から炎属性を奪った以上、木山家と檜山家は殲滅する」
「これから、檜山家を守り、支え、繁栄させていく役目を任されたエンマとしてこれ以上、好きにはさせない」
「……檜山家も木山家も無事だな。山梨支部を全て破壊したつもりだが……結界でも張っていたか?」
「優れた結界術を使う助っ人が来てくれてね。それに斉木家の彼には仁の事は頼んだし、なんの迷いも、未練も無い」
「死ぬ覚悟もあると言う事か。ここに来ないエンマ、ゲンマの二人とは違って、良いねぇ。お前……俺様は強い人間は生かす主義なんだよ」
「急になんだ?」
「見た目と匂いで強さが分かるんだよ。お前は中々だ」
「貴方に言われれば、誇れるね。この強さは」
エンマは能力を発動させ、自身の背後に閻魔大王の上半身、炎で燃えている状態で出現させる。
その炎の温度は魔法、能力、異能で出せる炎の温度としては世界で最も高温である。そんな閻魔大王を背後に上半身のみで出現させたエンマはゼウスを一度見ると、目を疑った。
「初めてだよ。これ程の罪深き者を見たのは」
エンマのその言葉を理解出来る訳も無く、ゼウスは首を傾げていた。




