第706話 ゼウス・アーベル
晴天が続いていた山梨支部の空は一瞬にして、曇り始める。
これはゼウス・アーベルの異能が深く関わっていた。
ゼウスの異能は全能神の災害。その異能はこの世の災害を何でも、起こす事が出来る異能である。それと同時にその災害と同属性のものは一切、ダメージを受けないと言うものだった。
そんなゼウスは山梨支部に侵入すると、共に雨の様に落雷が降り注ぐ。
「……私の役目はここまでと言う事で」
ハーデスは廉と秋人の前から姿を消す。
しかし、ハーデスのその言葉が廉と秋人の耳に届く事は無かった。山梨支部の外に居た廉と秋人は降り注ぐ雷に打たれる事は無かったが、その轟音によって、至近距離の音も聞き取れない程であった。
「異常気象ってレベルじゃあ無いですよ。雨も降ってないみたいですし、それにもう晴れている」
降り注ぐ雷が止んでするに空を見た秋人は常識離れしたその状況に戸惑いながら、廉に告げる。
「ゼウスが来たな。明日の予定の筈だが」
「あの雷がゼウスの力ですか?」
「雷のみの限定ではない。この世の災害を全て起こす事が出来る。今の雷はその内の一部だ。無能力者達は狙うつもりは無いらしい。俺は山梨支部へ戻るよ」
「俺も行きます。無能力者の代表として、俺が行かなければいけないとそう思うんです」
「命の保証は出来ない。ゼウスがその気になれば、山梨支部の人間はおそらく、殆んど死ぬことになるだろう。わざわざそんな危険地帯に足を踏み入れる事は無いよ」
「……それでも行けます」
「分かった。被害はできる限りでない様にする。ゼウスの目的は自身の炎属性を奪われた事にある。親父からそれを奪い、ゼウスに返せば、ゼウスも考え直すかもしれない」
二人が山梨支部へと行く決意を固めたその時、二人は立っていられない程の強い揺れに立っている事は出来ずに倒れ込んでしまう。
「ゼウス……落雷の次は地震かよ。早く止めないと、被害が増える一方だな」
廉はゼウスの異能が連続して発動されている事を焦りを感じながらも、地震が収まると走り出す。地面に倒れ込んでいた秋人も廉の後を追いかけ走り出す。
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山梨支部。
ゼウスの進行を受け、甚大な被害を受けていた。討伐には木山家、檜山家が先陣を任され、山梨支部の猛者達を率いていたが、ゼウスを前に近づく事も出来なかった。ゼウスの異能の一部を奪った事で炎属性が有効な攻撃となる事を聞いていた木山家、檜山家の者達は自身の炎を武器にゼウスに挑み続ける。




