第703話 奪いしもの
「空き地に現れた死神とは違いますね」
「……空き地に現れたのはハーデスだ。今居るのはその部下だ。ここで倒すよ」
「はい。どうやって戦うつもりですか?」
「シンプルさ。真っ向勝負だ。俺がやるよ。君は必要に応じてサポートしてくれ」
「分かりました」
廉は右手から大量の黒いオーラを放出させ、降炎魔神剣を一瞬にして手にする。すると、廉は全身から黒いオーラを放出させると、その黒いオーラを降炎魔神剣へと送り込む。
すると、降炎魔神剣の刀身は今までの緩やかな黒い炎の揺らめきとは違い、激しく燃え上がっていた。それに加え、降炎魔神剣の刀身の形状も少し小さくなり、それに明らかに縮んでいた。そんな廉の手にする降炎魔神剣の変化に秋人は言葉を出す訳でもなく、ただ見つめていた。そんな秋人に気がついた廉は降炎魔神剣を右肩に置き、笑顔で秋人に近づく。
「これは覚醒だよ。異能力者は力を増幅させる事を覚醒と呼ぶんだよ。異能力者の進化である覚醒はその気になれば、いくつもの進化を遂げる事が出来る」
「異能力者の進化」
「魔法も能力もあるんだが、多くの進化を得るのは異能力者だけだ。能力者は能力を維持したまま進化させる能力向上、能力を異能へと進化させるのを覚醒と呼ぶんだ。能力者の進化はその内のどれか一つだけだ」
「魔法もあるんですね」
「……後でな。黒いローブの奴が待ってくれなそうだ」
廉は戦闘体制を整え終わり、今にも廉達に向かって動こうと黒いローブの人間に肩に置いていた剣を黒いローブの人間へと向ける。
「来い。相手してやるよ」
廉のその挑発に黒いローブの人間は勢い良く、飛んで向かってくる。
「来たな。悪いが深炎魔神剣を使う以上、この勝負俺が勝たせて貰う」
廉は深炎魔神剣から大量の黒いオーラを放出させる。その黒いオーラは深炎魔神剣から離れる事は無かったが、まるで意志があるように動き始める。
「……」
「何も喋らねぇのか?」
「……」
黒いローブの人間は黒いローブから悪霊の様なものを廉に向けて解き放つ。
廉は深炎魔神剣を振るい、黒いオーラを悪霊の様なものへと全て接触させる事に成功させる。気がつくと、悪霊の様なものは姿を消しており、廉が手にする深炎魔神剣から放出させている黒いオーラの一部が悪霊の様なものを取り込んでいた。
「悪いが、深炎魔神剣は物質を吸収する事が出来てね。お前がどれだけ頑張って悪霊のそれを出しても、俺の深炎魔神剣が全て吸収してしまう。分かるだろう?この勝負はもう俺の勝ちだ」