第701話 魂を弄(もてあそ)ぶ者
空き地に集まっていた通行人達は我に返った様に何故その場所に居るのか、分からない様子で、戸惑っていた。
「死神の様な奴が消えた途端にこれか」
廉は死神を連想させる格好をした者が姿を消した直後、通行人達が我に返った事によって、死神みたいな存在が通行人達を何らかの方法で操作を終えた事を把握する。しかし、廉は死神の様な存在がなんの目的で空き地に通行人達を集め、何をしたのかは皆目見当もつかなかった。
通行人達は次第に空き地から離れていく。操られている様子は無く、様々な方向へと歩き出していた。
「付いていきますか?」
様々な方向へと移動を始めた通行人達を見た秋人は慌てて、廉に確認を取る。
「……誰について行っても、無駄だと思う。あの人達は日常に戻ったのだから」
廉のその言葉を受け、武田は廉に近づく。
「これからどうする?手がかりは何も無いぞ」
「……確かに手詰まりですね。エンマさんに連絡してみるよ。ゼウスの様子が知りたいので」
廉はスマホを耳に当てる。
「どうした?何かあった?」
「ゼウスの様子を伺いたいのですが」
「ゼウスは……情報によると、明日にはこの山梨支部に到着するそうだ」
「早いですね」
「それと感知系の能力者の話によると、山梨支部、山梨支部の外に数名の侵入者が居るそうだ。しかし、それは目視が出来ないらしい」
「……そうですか。死神みたいな奴が複数人居るようですね」
「その口振りから、もう会った様だな」
「ええ、さっきまで居た死神みたいな奴がその部隊を率いているみたいです。そいつに関しては、目視も、感知も出来ない存在ですよ」
「……ハーデスだな」
「チーム[オリュンポス]の副リーダーですか。正確な情報が欲しいのですが」
「知ってどうする?やるつもりか?」
「ここでやらないと後々、厄介にやりますよ。ここでハーデスは倒します」
「無理だ。ハーデスのその力は未だに解明されておらず、その姿は認識するのも難しいと言われる存在だ」
「俺なら、出来ます」
「認識が出来るだけだろ?勝てる訳では、無い。お前の言い分も分かる。ゼウスとハーデスを同時にやるのは不可能な話だ。だから、ハーデスを倒したのだろう。ハーデスは近づいた全ての魂を管理する事が出来ると言う。悪い事は言わない。近づくな」
「分かりました。ゼウスの対策は上手くいってますか?」
「全く上手くいっていない。相手があのゼウスだからな」
「ハーデスは山梨支部の外に居る無能力者達の魂と思われる物を上半身抜いています」