第70話造り直し(リメイク)
「とりあえず、あの警備を何とかしないとね」
八重さんの言う通りだ。
ドラゴンはいっぱい居るし、部屋も幾つもある。
ドラゴン達を退き能力者本人の元まで行くのは簡単じゃ無い。
部屋を一つ一つ探すのも時間がかかるし、部屋にドラゴンを待機させている可能性がある。
ドラゴンを倒して探すにしても、倒している最中に気づかれる。
私の神の義手を使えばあの団地の全てを使い大きな手に変化出来る。中に居ればそのまま押し潰す事も出来る。
……素人の私よりもここは浴衣ちゃんと八重さんに任せよう。
「私の黒影の槍の能力で近づいても良いけど……」
「私が壊しても良いけど」
八重さんが悩んでいると浴衣ちゃんが明るく話しかける。
……浴衣ちゃんは魔法と能力を使えるって言ってたよね。破壊系の能力なのかな?
八重さんは暫く考えると浴衣ちゃんの提案を採用する。
「分かった。浴衣、貴女の能力を使いましょう」
破壊なら私の神の義手でも出来るけど……
八重さんと浴衣ちゃんは私の能力を知らないのかな?
でもここは浴衣ちゃんに任せよう。
「私の能力は触れないと発動出来ないから八重ちゃんの能力で連れていって」
「分かったわ。荒川さんはここで待っていて」
浴衣ちゃんの能力は触れないと発動出来ないみたい。
今の私に出来る事は無い。ここで二人を待とう。
「分かりました」
私は八重さんの言う通りここで待つ事にした。
八重さんは自身の影から槍を手に取る。槍を手にした八重さんの影は無くなっていた。どうやら黒影の槍は八重さんの影を形に変え、影を操る能力みたい。八重さんは浴衣ちゃんの影に黒影の槍を突き立てる。槍は地面に刺さった様に見えず吸い込まれていく。浴衣ちゃんの影は揺らめき、激しく形を変える。浴衣ちゃんと八重さんは影の中に入っていく。
「玲愛ちゃん。行ってくるね」
「うん。気をつけて、浴衣ちゃん」
浴衣ちゃんは影に呑まれる直前に私に笑顔で告げた。
いつも明るく、私を照らしてくれる。浴衣ちゃん……頑張って
影は槍の形をしていて移動を始める。
移動を始めた槍の形をした影は空地の団地の元までたどり着いたみたい。
影から浴衣ちゃんが顔を覗かせる。浴衣ちゃんは周りを警戒してキョロキョロとしている。浴衣ちゃんは私を見るとvサインでアピールしてくれた。私は手を振って答える。浴衣ちゃんは団地に手を触れ、直ぐに影の中に入る。それと同じに影は私の元に素早く向かってくる。団地は崩れ始める。
「苦しい」
「慣れなさい」
影から出てきた浴衣ちゃんは愚痴を溢す。そんな浴衣ちゃんに八重さんは冷たくあたる。
それにしても浴衣ちゃんの能力って……団地は完全に破壊されている。
「凄いね。浴衣ちゃん」
「そうでしょう。私の造り直しは手で触れた物をリメイク出来る能力」
「リメイク?」
「うん。あの団地は私が造り直したの」
「でも……壊れているけど」
「もう一度触れれば元に戻せるよ」
……つまり造り直しって今ある形を造り直しせる能力。
浴衣ちゃんは今建っている団地を造り直して建物が崩れる様にしたって事……凄いな……
団地は壊れ、問題はこれから……私も頑張らないと