第694話 木山家と檜山家の会談
仁が外へと出ていき、檜山家は静寂に包まれていた。
それはエンマも理由は正確には把握出来ていないが、檜山家には人が全く居ないことを意味していた。通常なら、十人から二十人の人間が居るその時間帯に居ない事がエンマの不安を駆り立てた。
そんなエンマは真っ直ぐ、とある部屋へと向かっていた。
その部屋は先代のエンマ、つまり現在、正確には一週間後にエンマの名を襲名するエンマの実の父の部屋である。
「……父さん。居ますか?」
「なんだ?」
エンマは父のその声を受け、部屋の扉を開ける。
「少し、話があります」
「……聞いてやる。ゼウス関連か?」
「はい。その口振りからして分かっているんですね?」
「その件については、木山家の者と共に話す事になっている」
「木山家?」
「そうだ。ここに居るエンマの名を語る二人と、ゲンマの名を語る二人で話そうか」
「……廉も来るのか。さっき、仁が向かって行ったが」
「そうか」
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「廉。俺と勝負しろ」
「いきなりなんだ?」
「お前がゲンマの名を襲名して、俺がエンマの名を襲名出来なかったからって俺が弱い訳ではない。それを証明する」
「……今は無理だ。これから親父と檜山家へ行く所だからな」
「逃げるのか?」
「逃げねぇよ。お前とは決着をつけなければ、行けないと思っていたしな」
「本当だな?」
「あぁ。ゲンマの名を襲名して、一段落ついたら相手するよ」
「……良いだろう。待ってやる。ゲンマの名を襲名してから、初めて負ける相手はこの俺だ!」
「……そうなるかもな」
廉は強気な仁のその表情を見て、懐かしさを感じながら、家を後にする。
「何をしていた?」
「仁と話していたんだよ。親父こそ、久しぶりに弟に会える口実で出来て良かったな」
「何か怒っているな?」
「俺は知っているからな。なんで、ゼウスが山梨支部に来るのかを」
「……全ては檜山家で話す内容だ」
「両家で話す事なら、今日に限って檜山家、木山家の人間を様々な場所に任務を与えたのは何故だ?」
「……ゼウスが山梨支部に来る理由を知っているなら、分かるだろう?反乱が起きる。現にお前は怒りを露にしている。木山家と檜山家の両家全員の反乱が起きても困る……続きは檜山家で良いな?」
「分かった」
廉と父である現在ゲンマを名乗る二人は迎えにある檜山家へと入っていく。
二人が檜山家へとつくと、玄関先でエンマとその父が待っていた。
「……久しぶりだな」
「兄さんは変わりは無さそうだな」
エンマの父、廉の父は兄弟であり、廉の父が兄である。




