第692話 降炎魔神剣(レヴァンティン)
試合が始まると共に秋人は全身から黒いオーラを放出させ、辺りを包み込む。その黒いオーラは悪霊の様に蠢き出す。この悪霊の様なものは全てのエネルギーを喰らい、秋人にそのエネルギーを還元させるものだ。この原理や法則等が曖昧で、今までの能力のどれとも当てはまらない事から秋人のこの能力は能力不明となっている。
「見るからに、魔属性の能力みたいだな」
廉は悪霊の様ものに一度、目を向けると直ぐに目線を秋人へと移していた。
そんな廉を見て、昔から廉の事を知るエンマの表現は優れなかった。
「やっぱりか」
廉の一連の行動を見て、思わず出てしまったそのエンマの一言を雲雷は聞き逃さなかった。
「なにがだ?」
「……廉に魔属性の攻撃は意味をなさない。レヴァンティンがそうさせていると思うが」
「レヴァンティン?」
「廉の異能は神器であるレヴァンティンを体内から生成される剣だ」
「神器を持つ者は神器からの恩恵を受けるんだったな」
「あぁ。レヴァンティンを手にしなくても、廉は魔属性の攻撃を受けず、影響を受けない体質の様だ」
「……あいつ自身が身に付けなくても、体内に存在していれば、持続するってことか……からレヴァンティンを手にした時に奪えば良い」
「廉の剣術のレベルは日本五大剣客の誘いを断った程だ。山梨支部から一時でも離れたく無い。廉らしい答えだ」
そんな二人の会話が秋人の耳に届く筈も無く、秋人は攻撃を仕掛ける。
辺りを蠢かせていた悪霊の様なそれを廉へと向かわせる。
廉は微動だにする事無く、その場で立ち尽くし動くことは無かった。
悪霊の様なそれが廉に食らい付いても廉からは一切のエネルギーを奪えない事は秋人も直ぐに理解出来た。
「何で?」
「悪いね。降炎魔神剣が逆に食らったみたいで」
「どうゆう?」
「……説明すると長くなるから、止めておくよ。このまま続けるかい?それだと、一方的になりそうだが」
廉は右手に黒い炎を灯し、その黒い炎を軽く振るう。
すると降炎魔神剣は姿を表す。日本刀の様な形状に黒い刀身、常に黒い炎に包まれたその剣を廉が手にしたその時、廉の方向から激しい突風が秋人を襲う。秋人はその突風に逆らう様にして、廉を確認すると、そこにはさっきまで廉は居なかった。まるで別人の様に感じさせる廉が居た。
「……止める事をオススメするよ」
廉からのその提案に秋人はここに意味意味を踏まえ、全身するものの、たった一歩で床へと膝をつく。
「参りました。俺の敗けです」




