第687話 閻魔大王(えんまだいおう)
「……これは俺のものだ」
「ふざけるな!」
雲雷は手にしていた雷鳴雷轟を投げつける。
しかし、強絶に届く前に円盤状の様な雷が防御される。
「……理解出来ている筈だ。俺の実力は」
「糞が」
強絶は雷鳴雷轟を手にする。
しかし、強絶は直ぐに手放す。
「……拒否されたな」
強絶の手から離れ、地面に雷鳴雷轟が落ちたそんな時、強絶は温度が上昇した事に気がつき、それを目にする。
一週間にエンマの名を襲名する檜山エンマの背後に五メートルを越す炎に包まれた巨人。これこそエンマの能力である閻魔大王。
閻魔大王は能力、異能において最高の高温を誇る。
そして、その一撃は悪人しかダメージを与える事が出来ないが、その一撃は悪人の罪深さによってダメージが変化する能力である。
エンマの背後に居る炎に包まれた閻魔大王を見た氷雪は能力を発動させ、氷付けにしようとするが、それを察知した強絶は氷雪に手を伸ばし、その行動を制止させる。
「待て、氷雪。閻魔大王は罪人しか攻撃出来ない。ここで俺達から攻撃を仕掛ければ、閻魔大王の攻撃を受ける事になる」
「……変わってるね。それじゃ、攻撃しなければ良いね」
強絶、氷雪が攻撃をするのを止め、エンマと対峙していると、エンマは強絶へと近づく。
「……閻魔大王を出してから、カウントするわけではない。橘強絶。お前の過去には罪は無いのか?あるなら、ここで裁こう」
「閻魔大王の攻撃では無く。閻魔大王の体から放たれる熱量だけで焼け殺すつもりか?」
「それも出来るが、今は違う。閻魔の裁きを受けて貰う」
「……俺に罪があればな」
「雲雷の妹の神器を持つお前が、分家となった立花家を殺している橘家に身を置く、お前が罪が無いわけ無い。受けるが良い」
エンマのその言葉と同時に背後に居る閻魔大王は右腕を上へと挙げる。
「閻魔の処罰は罪を犯したものにその罪に見合ったダメージを与える攻撃……今までの罪の重さに準じた一撃。閻魔の処罰」
閻魔の処罰その攻撃は対象の人間がこれまでの罪に応じたダメージを相手に与える技である。そんな一撃が今強絶へと襲いかかる。
右腕を振りかざした閻魔大王の攻撃は強絶に襲いかかる事無く、途中で停止する。
「……馬鹿な。罪が無いのか?」
「そうだ。だからこそ、閻魔大王は攻撃を停止させた」
「可笑しいだろ?お前は立花家の者を殺している筈だ!」
「俺は誰も殺していない。俺以外の橘家の者が分家となった立花家を殺し、雷神剛杵も俺も俺が盗んだ者では無い。受け取ったものだ。そんなに説明よりもはっきりしている筈だ。閻魔大王が攻撃をしなかったのだから」




