第683話 味方
雷鳴雷轟から放たれた雷は秋人へと向かい飛んでいくが、秋人の全体を包む、黒いオーラで形作られたまるで悪霊の様なものに接触すると、雷はかき消される。
「……なんで?」
「……説明は出来ないよ。誰にもね。だからこそ、能力不明なんだから」
「負けたわけでは、無い。雷が効かなくても、剣で斬れば良い」
雲雷は秋人を斬りつける為に走り出す。
秋人は避ける事無く、動く事無く、悪霊の様な形へと変化した黒いオーラを放出させる。悪霊の様な形となったそれは秋人の元を離れると、独りでに動き始め、その量は一瞬にして辺り一面を埋め尽くされる。
「……なんだ?」
雲雷は直ぐに異変に気がつく。
雲雷の手にしている雷鳴雷轟の刀身を覆っている雷は辺り一面を埋め尽くす悪霊の様なものが雷を食らい始め、全ての雷を食らうと、不気味な声で蠢き出す。
「なんだ。何が起きている?」
「欲しているんだよ。雷では足りない様だ」
「足りない?」
「……喰らいたいのさ。喰らえるものは全て!」
秋人のその言葉通り、悪霊の様なそれは雷鳴雷轟を目掛け、動き出す。しかし、それは一部だった。秋人以外の全ての人間に悪霊の様なそれは襲いかかる。悪霊の様なそれが人間を通り抜けていく、精気が奪われていく。
それだけでなく、感情、思考等様々なものが奪われていた。
雲雷は雷鳴雷轟を維持出来ずに消滅してしまう。それに加え、悪霊の様なそれは未だに雲雷達の体を出入りしていた。
「……ここまでにしておくよ」
秋人は黒いオーラで作られた悪霊の様なものを消滅させる。
「……この二人は無力化させたよ。味方になって貰うよ」
「……」
「済まない。この能力はコントロール出来なくてね。場所を変えようか」
秋人は襲われていた男を抱き抱えると、その場から離れる。
そんな秋人の肩に手が置かれる。
「……まだ動けるとは」
「……そいつを味方にして……どうする?」
「……変えたいのさ。山梨支部だけでも」
「出来るのか?」
「やるしかない。それじゃね」
「待ってくれ!俺をこんな簡単にやられた事が無い。そんな奴よりも俺を連れていってくれ」
「……分かった。でも、この子もだ」
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「兄貴、ここが俺達のアジトです」
雲雷の提案によって、秋人達は雲雷が拠点としている廃墟の建物へとやって来ていた。
「……一つ気になる事があったんだが」
「何でしょ。兄貴」
「まず兄貴と呼ぶのは止めて貰おう」
「しかし……でも」
「……分かった。好きにしろ」




