第679話 戻ってきた者
フェンリルがベルセルクに喰われる少し前の物語である。
「……その情報は信用出来るのかしら?」
「はい。間違いありません。ミスターXは戻ってきます」
「……いつ戻るのかしら?」
「もう間も無く」
「では、チーム[ダイヤ]の全員で出迎えるわよ」
茶髪のその女性はチーム[ダイヤ]の副リーダーであるアンジェリカ・テイラー。世界中を旅をし不在の続くミスターXの代わりにチーム[ダイヤ]を動かしている人物である。そんなアンジェリカの指示によって、チーム[ダイヤ]の全員はミスターXの帰りを王宮の前で待っていた。
そんな時にも、フェンリル護衛と幻魔討伐の任務があったにも関わらず、チーム[ダイヤ]は何処にも配属を言い渡されていない。これはエリザベス女王とミスターXの間に特殊な契約が行われている為にチーム[ダイヤ]の全員は一人も欠ける事無く、ミスターXの帰りを待つことが出来ていた。
「……来たわ」
アンジェリカのその声と共にミスターXの姿を確認したチーム[ダイヤ]の全員はミスターXの元へと駆け寄る。
「……お前ら……どうした?」
「ミスターX。お帰りを待っていました」
「……そうか。……何年ぶりだ?」
「半年ぶりです」
「そうか。もうそんなに経つのか。取りあえず、女王陛下に挨拶をしないとな」
「その事で少し」
「何かあったのか?」
ミスターXは男の顔色を変えたその瞬間を見逃す事は無く、それに触れる。
「……チーム[キング]のリーダー、ドラゴ・クラークが王宮の中へと」
「魔導艦隊ーキングに引きこもっているドラゴが出てくるとは、何かあったのか?」
「……フェンリルが喰われた様で」
「あの大狼を食べる奴がこの世の何処に居るんだよ?」
「ベルセルク・フルベルクです。チーム[ヴァルハラ]は現在、撤退している様です。そして何よりもその任務に付いていたのが、チーム[ソード]のリーダー、アレクサンダー・ペンドラゴンです」
「……アレクサンダーはどうした?」
「……それが」
「そうか。人一倍責任感の強い奴だからな。……女王陛下に会う前にアレクサンダーを探す」
「お供します」
「断る。一人で十分だ」
アレクサンダーはその場を後にしようと動こうとしたその瞬間、アンジェリカとすれ違う。
「後は任せる」
「はい」
アンジェリカにチーム[ダイヤ]のその後を任せ、ミスターXはアレクサンダーを探しに動く。
「やっぱり、ここに居たか」
ミスターXはアレクサンダーが育ったその場所でその姿を捉える。




