第678話 神殺しの狼(ヴァナルガンド)
ベルセルクは手に持っていたフェンリルの体の一部を食べ終わる。
すると、ベルセルクの体は突然巨大化し、二足歩行のフェンリルと化した。
「人間がフェンリルになるだと?」
アレクサンダーはベルセルクが能力喰いの能力者であることは知っていたが、現在のベルセルクの姿は能力喰いでは説明の出来ない事だ。そんなアレクサンダーを見たパラスは面白いそうに語り出す。
「……それほど、理解出来ないのかね?ベルセルクはとある少年を食べ獣神変化の能力を得ている」
「獣神変化……獣に変化する能力……獣属性は希少なものだったな」
「そうさ。ベルセルクは野島大河を食べることでその能力を得たのさ」
「……そうか。その能力を使って、自在に姿を変化させたのか」
「神殺しの狼……神の天敵さ」
「……神キラーか」
その状況を理解したアレクサンダーはその場を離脱する。
そんなアレクサンダーを寂しげな表情でパラスは見送る。
「残念だよ。エクスカリバーのデータが欲しかったが……今回は諦めよう。それにして、フェンリルの警護の意味を成さないと理解した途端に撤退とは、見事な判断だな」
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「……ルーカス」
アレクサンダーは出口へと向かうその途中で部下であるルーカスと出会う。
しかし、ルーカスは地下廊下の護衛をしていた事はアレクサンダーは理解していた。しかし、現在のルーカスは逃げる様にして、フェンリルが居た場所へと向かい走っていた。
「リーダー。こんな所で何を?」
ルーカスはフェンリルの部屋の前で護衛をしていた筈のアレクサンダーが出口へと向かい走ってきた事に戸惑っていた。
「……フェンリルは喰われてしまった。フェンリルの部屋からパラス・スケールと名乗る男が現れた。詳しい説明は後でする。今は撤退だ!見方の位置は分かるか?」
「はい。感知出来てます」
「それでは、転移魔法で移動を頼む」
「はい」
ルーカスはアレクサンダーの指示通り、転移魔法を使用してその場から見方のみを連れ出す事に成功した。
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「ドラゴ。貴女が私の目の前に現れるとは……何年ぶりですか?」
「……一年ぶりですかね。アーサーもそれぐらいだろ?」
ドラゴはエリザベス女王の隣で護衛を続けるアーサーへと話を向ける。
「……僕の事はどうでも良いだろう。それよりもアレクサンダーは何故報告に来ない?」
「失態したからだろ。目の前でフェンリルをベルセルク・フルベルクに喰われているんだからな」




