第677話 解き放たれるフェンリル
「それが誇りだ。この誇りをかけて、倒して見せる」
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フェンリルが捕らわれるこの場所でとある人物が出現する。
その人物はフェンリルの口の中から現れた。
「……何者だ?口の中から現れるとは」
口の中に異変を感じたフェンリルが噛み殺そうとしたものの、それが出来ない事に驚くと、共に現れた人物が思いの外弱々しく、痩せ細った事がフェンリルを更に動揺させた。
「……お前を造った者だよ。造った者は裏切れない様にするのは、創造者として当然の義務とは思わんか?」
「……ふざけた事を」
「お前はチーム[ヴァルハラ]に渡す事にした。お前の代用はハティとスコルが出来たからな」
「何を言っている?」
「チーム[ヴァルハラ]の提案は魅力的なものだった。その交換条件として、フェンリルお前を引き渡す」
その男は魔法の鎖を手で触れると、消滅させた。
自由の身となったフェンリルはその男目掛け、鋭き爪で襲いかかる。
しかし、フェンリルのその攻撃はその男の目の前で停止する。
「……産みの親であるこのパラス・スケールに反逆は許されない」
「ふざけるな」
「……ベルセルク・フルベルクはもう部屋の目の前に居るようだ」
パラスはその部屋の扉に魔法陣を出現させると、その扉を破壊する。
その破壊によって、剣を交えていたアレクサンダーとジークフリードは距離を取る。
「……フェンリルの部屋が内側から破壊された?(……フェンリルは魔法の鎖で動けなくなっている。だとすると、フェンリル以外の誰かだな)」
アレクサンダーは冷静にフェンリル以外の誰かが、扉を破壊したと言う事実を見極める。
「……ほう。これがエクスカリバーか?」
部屋から出てきたパラスはアレクサンダーが手にしている偽王聖剣を物珍しそうに眺めながら告げる。
「誰だ?」
「パラス・スケールと名乗れば、君の理解は追い付くのかな?」
「……賢者の石を造った男だろ?」
「その通りさ」
「パラス・スケールが賢者の石を初めて造ったのは二世紀前の話だぞ」
「……何を語るよりも、目の前にある光景を信じたまえ」
「誰だろうと、関係ない。ここに居るジークフリード・アンサンブル、ベルセルク・フルベルク、パラス・スケールの三人はここで捕らえる」
「それは出来るのかな?」
パラスの目線の先をアレクサンダーは見つめ、驚愕した。
そこに居た筈のフェンリルの姿は無く、ベルセルクだけの姿があった。その場所には血が溢れ、ベルセルクの手はフェンリルの体の一部が握られていた。




