第375話 最終防衛ライン
地下に捕らえていたフェンリルの扉のその目の前にアレクサンダー・ペンドラゴンは立ち尽くしていた。
そんなアレクサンダーの目の前にジークフリードは現れる。
「……フェンリルを守る最終防衛ラインは一人で守りを固めているとは思わなかったよ」
ジークフリードのその言葉を聞き入れる事無く、アレクサンダーは右手をジークフリードの隣側へと向け、白いオーラを放出させる。
ジークフリードは自身へと放たれなかった事に驚いたのは勿論だが、まさか黙視できない者へ対処された事に動揺していた。
「……隠匿魔法を使って無駄だよ。僕の白魔術:対魔術は黒きものを全て浄化させる」
「……ベルセルク。どうやらフェンリルの所まで気づかれずに侵入する事は叶わなくなってしまったよ。でも、無傷でフェンリルの所まで送るよ」
ジークフリードは出現させた魔法陣に右手を入れる。
そして、右手を魔法陣から取り出すと、その手には魔帝神剣を手にしていた。
「……魔帝神剣は魔属性だ。僕には効かないよ」
「対魔術で対応出来ればの話だ。それに試したい事もあるからね」
ジークフリードは能力を発動させる。
受注生産はジークフリードが思い描いた通りに形、色まで生物以外なら何でも造れる能力である。大きさや重さには限度が存在している。ジークフリードはこの場所が地下廊下である事から、小型の阿修羅の銅像を造り出す。ジークフリードは続き、鎖で縛られ、背よっている黒棺に手を置く。ジークフリードは黒棺から取り出した魂を阿修羅の銅像へと入れ込む。すると、阿修羅の銅像は動き始める。
「無駄だ!」
アレクサンダーは白いオーラを纏わせていた右手から白いオーラを阿修羅へと放つ。すると、阿修羅の動きは停止する。
「……君の対魔術は降霊術にも有効的に働くんだね」
「当たり前さ。僕の目の前には闇の存在を一切認めない」
ジークフリードは出現させていた阿修羅の銅像を消し去る。
そして、魔帝神剣を手にしたまま、アレクサンダーへと接近を果たす。アレクサンダーは全身から白いオーラを放ち、背中の少し離れた箇所に魔法の翼を十枚展開させ、頭上には、魔力の塊の天使の輪が現れる。
(……白呪術を極め、聖神化となったか)
ジークフリードは躊躇いもなく、アレクサンダーへと斬りかかる。
アレクサンダーは腰に携えている偽王聖剣を抜く事無く、右腕で防御する。
「随分と余裕だね。魔帝神剣を腕で防ぐなんて、でも魔帝神剣は物体を腐敗させる剣。君の腕は持つのかな?」




