第669話 ドラゴ・クラーク
拳闘魔神は何の躊躇もなく、エマへと殴りかかる。
エマは自身の目の前に黙視できない固定魔法を壁の様に五層造り出す。
しかし、拳闘魔神のその右拳によって、一瞬で破壊される。
魔神化した状態のエマは全魔力を魔法陣へと注ぎ造り出す。
拳闘魔神は固定魔法を破壊した右拳をそのまま、エマが出現させた魔法陣へと衝突させる。
エマの全魔力を注ぎ込んだ事もあって、拳闘魔神の一撃でも破壊出来ずに居た。だが、拳闘魔神の右拳と接触を続ける魔法陣のエネルギーを吸収していた。魔法陣は弱体化していき、拳闘魔神の身体能力は向上していた。
魔法陣が破壊されるのは時間の問題となっていた。エマもそれは理解しており、この状況を打破する術を考えていた。
しかし、エマの頭に過るのは逃走のみが頭を過っていた。だが、逃げれば、拳闘魔神を地下へと向かわせる事にやる。
「全く、女王陛下には叶わねぇな」
エマの耳元で囁かれる様にして、告げられたその言葉にエマは動揺すると共に、その声のする方向へと目を向ける。
そこには白い竜が居た。
「……この竜は?」
「お前はもう下がってろ。ここからはチーム[キング]のリーダードラゴ・クラークがやってやる」
エマは自身の魔力が無い事と、この状況を打破する術が無い事から、その場を白い竜へと任せ、白い竜の背後へと移動する。
この間に、拳闘魔神はエマが出現させていた魔法陣を破壊していた。
「……ハクリュウガワレノマエヲフサグカ?」
「お前が拳魔か?資料とは大分違うみたいだな?」
「ゲンザイノワレハケントウマジントナッテイル」
「……そう、さっさとこの場でお前は終わらせる」
「イイダロウ。ナンジガキョウシャカミキワメテヤル」
身体能力がかなり強化された拳闘魔神は攻撃を受けて、自身の能力向上をする必要も無い程、強化されていた。
そんな拳闘魔神は白い竜へと殴りかかる。
白い竜は簡単に吹き飛ばされる。
それと同時に、地下へ向かう階段付近に置かれた竜の銅像が急に動き出すと、その口から黒髪の男性が姿を現す。
その男こそ、ドラゴ・クラークである。
かつて別の組織に所属していたが、チーム[キング]の先代のリーダーが戦死した事によって、ドラゴがその跡を継いだ。
元々、チーム[キング]が所有する魔導艦隊ーキングを所有しており、現在も魔導艦隊ーキングで生活しながら、イギリスの空を守っている。
そんなドラゴは世界でも竜属性の頂点とされる全ての竜を統べる神の異能力者である。




